卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体グループリーグのスウェーデン対香港の4番、黄鎮廷(香港)対モーレゴード(スウェーデン)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
黄鎮廷がペンホルダーの特性を生かしたプレーで
時代の旗手・モーレゴードから主導権を奪う
世界卓球の団体戦はチームの勝敗が最大の関心事であることは言うまでもないが、それとは別に、個々の対戦も見どころの1つだ。世界のトッププレーヤーが一堂に会する世界卓球では、そこかしこで有名選手同士の対戦が行われており、見応えのある試合が繰り広げられる。
今回紹介する黄鎮廷(香港)対モーレゴード(スウェーデン)も、そうした個々の対戦で関心が高かった試合の1つだ。
黄鎮廷は裏面にラバーを貼るペンドライブ型で、素早いフットワークを生かしたフォアハンドドライブを持ち味にする選手だ。昨秋に行われたアジア競技大会男子シングルス銅メダルを筆頭に国際大会での実績も十分で、エースとして長年にわたって香港を支えてきた。
年齢は32歳でベテランの域に達しつつあるが、フォアハンドドライブの迫力や裏面ドライブの安定感は、ここにきてさらに増している印象がある。
一方のモーレゴードは、世界卓球2021ヒューストン男子シングルスで決勝まで勝ち上がり、一躍脚光を浴びて以降、国際大会でコンスタントに好成績を収めて強豪スウェーデンのエースへと成長を遂げた。
戦型はシェーク攻撃型だが、とっさのひらめきで出しているかのような多様なサービスやはじくようなバックハンドなど、従来のシェーク攻撃型の枠にとらわれないプレーは独創的で、今の男子卓球界をリードする選手の一人だ。
円熟味が増している黄鎮廷か。それとも型破りなモーレゴードか。
注目のエース対決は、モーレゴードが軽快なスタートを切るが、黄鎮廷が第1ゲームを逆転で奪ってペースを握る。
高速プレーにはめっぽう強いモーレゴードだが、黄鎮廷の一瞬ためをつくってから放つフォアハンドドライブや手首を利かせたシンプルな縦回転系サービス、ナックル(無回転)性のフリック(払い)など、シェーク攻撃型の選手にはあまり見られないプレーに手を焼き、なかなかリズムをつかむことができない。
シェーク攻撃型が大勢を占める現代卓球では、ペンホルダーを選択する選手が減少の一途をたどっている。しかし、だからこそ、その希少性を生かすことができればペンホルダーにも十分勝機はある。そのことがよく表れている名勝負だ。
(文中敬称略。年齢は大会時)
↓動画はこちら
(文/動画=卓球レポート)