卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、女子団体決勝トーナメント1回戦のタイ対オーストリアの4番、ポルカノバ(オーストリア)対S.サウェッタブート(タイ)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
ポルカノバがアジア顔負けのプレーで
実力者のS.サウェッタブートを引き離す
世界卓球2024釜山は団体戦だが、個人の注目カードとして前回はA.ディアス(プエルトリコ)対申裕斌(韓国)の一戦を紹介した。
今回は、ポルカノバ(オーストリア)対S.サウェッタブート(タイ)をピックアップしたい。
グループ4を2位通過したタイと、グループ6を3位通過したオーストリアが決勝トーナメント1回戦で対戦。試合は、1番がオーストリアのポルカノバ、2番はタイのS.サウェッタブートがそれぞれ勝利し、両チームのエースが順当に勝ち点を取り合う展開になったが、3番の接戦をタイが物にして4番のエース対決を迎えた。
勝利に王手をかけたタイのエースであるS.サウェッタブートは、安定感のある両ハンドが持ち味のシェーク攻撃型で、昨秋に行われたアジア競技大会ではチームを銅メダルに導くなど、長年にわたってタイをけん引している選手だ。Tリーグにも参戦し、2019-2020シーズン前期では並み居る強豪を抑えてMVPを獲得していることから、S.サウェッタブートのプレーに接した日本の卓球ファンも多いだろう。
この試合の2番ではベテランのリュウ・ジャ(オーストリア)を充実のプレーで下しており、好調を保っている。
勝ってラストに望みをつなぎたいオーストリアのエース、ポルカノバはサウスポー(左利き)のシェーク攻撃型だ。すらりと伸びた体格を一見するとパワータイプに見えるが、球威で押すというよりも、リーチ(腕の届く範囲)の長さをカバーリング力に生かし、前陣での速いプレーを得意とする。
2022年ヨーロッパ卓球選手権大会女子シングルスで優勝を果たし、今年の1月に行われたヨーロッパトップ16カップ女子シングルスで2位に入るなど、ポルカノバはヨーロッパの女子の顔とも呼べる選手だ。
ともに1994年生まれの両者の戦いは、ポルカノバが前陣からバックハンドを広角に打ち分けてS.サウェッタブートを振り回し、主導権を握る。フットワークの良さと両ハンドの安定感に定評のあるS.サウェッタブートだが、ポルカノバのバックハンドのピッチの早さと厳しいコース取りに加え、横回転系とYG(逆横回転系)を織り交ぜたサービスと丁寧なストップレシーブにも手を焼き、なかなか劣勢から抜け出すことができない。
一般に、ピッチの速さやサービス・レシーブのうまさはアジア、パワーはヨーロッパが上だとされる。そうした一般論をよそに、ヨーロッパ選手を象徴するような恵まれた体格からアジア選手顔負けのピッチの速さと巧妙なサービス・レシーブでリードを広げるポルカノバのプレーは必見だ。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)