卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体準々決勝の中華台北対ドイツの1番、荘智淵(中華台北)対ダン・チウ(ドイツ)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
メダルをかけた中華台北対ドイツの大一番
荘智淵が魂のプレーでダン・チウの堅陣に挑む
メダルがかかる準々決勝は、世界卓球のトーナメントの中で最も白熱するラウンドだ。世界卓球2024釜山も例に漏れず、準々決勝で熱戦が相次いだが、その中から今回は中華台北対ドイツの一戦を取り上げる。
中華台北は、日本と同組のグループ5を2位通過すると、決勝トーナメント1回戦でセルビア、2回戦で強豪のスウェーデンに競り勝って準々決勝まで勝ち上がってきた。エースの林昀儒にベテランの荘智淵、成長目覚ましい高承睿という若手とベテランが融合したオーダーで10年ぶりのメダルを目指す。
一方、過去2大会連続で決勝まで勝ち上がっているドイツは、ダン・チウ、オフチャロフ、フランチスカと豊富なタレントをそろえて中華台北を迎え撃つ。今大会では、グループ2を首位通過すると、決勝トーナメント2回戦で実力者ぞろいのイランにストレートで快勝し、準々決勝まで順当に駒を進めてきた。
試合の流れを決める1番、中華台北は荘智淵、ドイツはダン・チウをオーダーしてきた。
荘智淵は、切れ味鋭い両ハンドを武器に長年にわたって中華台北をけん引してきたレジェンドだ。42歳の荘智淵だが、グループリーグの日本戦における松島輝空との大激戦を見る限り、力の衰えが見られないどころか、ここにきてさらにプレーが研ぎ澄まされてきた印象がある。
対するダン・チウは裏面にラバーを貼るペンドライブ型で、名将の誉れ高い邱建新氏を父に持つサラブレッドだ。安定感抜群の台上技術と裏面打法を武器に世界ランキングを10位まで上げ、ドイツのエースとして今大会に臨んでいる。
試合は、荘智淵の切れ味鋭い両ハンドとダン・チウの安定感抜群の両ハンドが激しくぶつかり合う接戦になるが、荘智淵がここぞの回り込みフォアハンドで勝負どころを物にしていく。
両者ともチキータに頼らず、ストップやディープツッツキ、フリック(払い)など多彩な台上技術を駆使するため、起伏に富んだ味わい深いラリーが数多く見られる名勝負だが、注目はなんといっても荘智淵だ。
思い起こせば、世界卓球2014東京で中華台北が世界卓球初のメダルを獲得した時も、準々決勝の韓国戦で荘智淵が獅子奮迅の働きをしてチームを勝利に導いた。
あれから10年の月日がたち、その間、若手が次々と台頭してプレーの傾向も大きく様変わりしたが、荘智淵のプレーに陰りは一切見られない。いったい、どれほどの修練と節制の日々を送れば、42歳を迎えたベテランが強豪ドイツのエースに対してこんなプレーができるのか。
「年齢はただの数字にすぎない」とは、ベテランが脚光を浴びる際によく用いられる言葉だが、それを体現する荘智淵の魂のプレーにしびれてほしい。
(文中敬称略。年齢、世界ランキングは大会時)
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(文/動画=卓球レポート)