卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、女子団体準々決勝の香港対中華台北の4番、鄭怡静(中華台北)対杜凱琹(香港)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
アジアを代表するエース対決
ハイレベルな打撃戦の行方は?
女子団体準々決勝は、中国が韓国に、日本がルーマニアにそれぞれストレート勝ちしたが、香港対中華台北、フランス対ドイツの2試合はラストまでもつれる激戦になった。ラストまでしのぎを削り合った2試合の中から、とりわけハイレベルな打ち合いになった鄭怡静(中華台北)対杜凱琹(香港)の一戦を名勝負としてセレクトする。
鄭怡静は、世界卓球2006ブレーメンの代表に14歳という若さで抜てきされて以降、中華台北をけん引してきた選手だ。プレースタイルはシェーク攻撃型で、バック対バックの強さに加え、素早いフットワークから繰り出す威力のあるフォアハンドドライブは男子をほうふつとさせる。国際大会で継続して好成績を収め、長年にわたって世界ランキングの上位をキープしており、この世界卓球2024釜山には世界ランキング10位で臨んでいた。
対する杜凱琹も、鄭怡静同様、ジュニア時代から頭角を現して以降、長年にわたって香港をけん引してきた選手だ。安定感抜群の両ハンドが持ち味だが、中でもバックハンドの精度は格別で、バック対バックに無類の強さを誇る。アジア系の選手としては珍しく、YGサービス(逆横回転系サービス)を中心にサービスを組み立てるのも杜凱琹のプレーの大きな特徴だ。
中華台北が勝てば世界卓球2022成都に続いて2大会連続のメダル、一方の香港が勝てば世界卓球2018ハルムスタッド以来2大会ぶりのメダルがかかる一戦は、1番で杜凱琹が陳思羽(中華台北)を、2番は鄭怡静が朱成竹(香港)をそれぞれストレートで下して星を分け合うが、3番はベテランの李皓晴(香港)が若手の李昱諄(中華台北)を退け、香港が2対1とリードして鄭怡静対杜凱琹の4番を迎えた。
アジアを代表するチームのエース同士の一戦は、予想にたがわぬハイレベルな打撃戦を繰り広げながらもつれてゆく。
前陣を基本にしながら、ここぞという場面では足を使って強力なフォアハンドを打ち込む鄭怡静と、YGサービスから精密機械のようなバックハンドでペースを握ろうとする杜凱琹。
世界卓球2024釜山における女子の試合の中でも屈指の名勝負をじっくりと味わってほしい。
(文中敬称略。世界ランキングは大会時)
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(文/動画=卓球レポート)