卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体準々決勝のフランス対ポルトガルの1番、フレイタス(ポルトガル)対A.ルブラン(フランス)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
ベテランのフレイタスが持ち前の柔らかいプレーで
新時代の旗手A.ルブランの攻撃に待ったをかける
世界中が新たな才能に気づいた一戦として、前回は中国対日本の男子団体準々決勝から樊振東(中国)対松島輝空(日本)を紹介した。松島のような期待の新鋭の出現を目撃できることが世界卓球の醍醐味(だいごみ)だが、世代の離れた選手たちの対決も見どころの一つだ。
歴戦を重ねたベテランが若手をどう攻略するのか。一方、新進気鋭の若手がベテランをどう打ち破るのか。構図が明確なベテラン対若手の一戦は想像力をたくましくさせてくれるが、今回取り上げるフレイタス(ポルトガル)対A.ルブラン(フランス)も期待にたがわぬ名勝負になった。
フレイタスは35歳のベテランで、ボールタッチの良さを生かしたサービス・レシーブの精度の高さに加え、両ハンドの安定感が抜群の選手だ。水谷隼や岸川聖也らと同世代で、長年にわたって日本代表としのぎを削ってきたことから、フレイタスのセンスあふれるプレーを知る日本の卓球ファンは多いだろう。
1月に行われたヨーロッパトップ16カップでは3位に入るなど、まだまだ意気軒高だ。この世界卓球2024釜山でも、準々決勝まで並み居る強敵を向こうに回して7戦全勝と文句なしの強さを見せている。
対するA.ルブランは、今夏にパリオリンピックを控えるフランスが大きな期待を寄せる20歳の新鋭だ。相手に的を絞らせない多彩なサービスから、つなぎをほとんど使わず、果敢にパワードライブやカウンターで得点を狙う超攻撃的なプレーを持ち味にする。
相手に息つく暇を与えないほどプレーの間合いが早いのも大きな特徴で、得点という目的遂行めがけて一直線に攻めまくるA.ルブランのプレーは、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスの良さが叫ばれる現代を象徴しているかのようだ。
ポルトガルが勝てば史上初、フランスが勝てば1997年のマンチェスター大会以来のメダルがかかる重要な一戦のトップで対戦した両雄は、フレイタスの柔らかいプレーと、A.ルブランのハードヒットが交錯しながら序盤から接戦になる。
第1ゲームは、フレイタスがスタートダッシュをかけるもA.ルブランが追い越してゲームポイントを握り、再びフレイタスが追い付く目まぐるしい展開になるが、ジュースでも攻撃の手を緩めなかったA.ルブランが先制する。
やはり、躍進目覚ましいA.ルブランが強しか。そう思われた第2ゲーム、フレイタスがタッチの柔らかさと気迫をうまくシンクロさせたベテランらしいプレーで、新鋭の勢いに待ったをかける。
(文中敬称略。年齢は大会時)
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(文/動画=卓球レポート)