卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体準決勝の中国対韓国の1番、張禹珍(韓国)対王楚欽(中国)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
地元開催に奮い立つエースが躍動
最強左腕に魂の回り込みがさく裂!
世界卓球2024釜山では数々の名勝負が繰り広げられたが、その中でも男子団体準決勝の中国対韓国は最も盛り上がったカードの1つだろう。
この準決勝は土曜日に行われたということもあり、地元の韓国チームを後押ししようと会場のベクスコ・コンベンションセンターには大勢の観客が駆けつけた。加えて、中国からも男子チームを推す熱烈なファンが大挙して押し寄せ、場内は試合前からただならぬ熱気に包まれた。
今大会で11連覇を目指す中国は、準々決勝で日本をストレートで退け、順当に準決勝まで勝ち上がってきた。日本戦では1番でエースの樊振東が松島輝空に迫られたが踏みとどまって流れをつくると、2番で王楚欽が張本智和を、3番では馬龍が篠塚大登に勝利し、盤石な強さを見せている。
2008年広州大会以来の決勝進出を狙う韓国も、準々決勝で今大会の台風の目になっていたデンマークを3対1で振り切り、地元開催の利と重圧を受けながら準決勝まだしっかり勝ち上がってきた。
試合が始まると、今回紹介する張禹珍(韓国)対王楚欽(中国)の1番からトップギアに入る。
張禹珍は、ここぞという場面での回り込みフォアハンドドライブを武器に、長きにわたって韓国代表を支えている選手だ。2013年世界ジュニア選手権ラバト大会男子シングルス優勝を端緒に国際大会での実績も十分で、今大会はエースとして韓国をけん引している。
一方の王楚欽は、常勝中国が多大な期待を寄せる次期エース候補筆頭だ。左腕から繰り出す技はサービスからラリーに至るまで全てが強烈で、樊振東とならんで世界最強の呼び声が高い。
準々決勝で張本に第1ゲームを先制されながら全く動じずに3ゲームを連取したプレーは圧倒的で、王楚欽を崩すのは容易ではない。
力ではもちろん中国が上だが、爆発力があり、なおかつ地の利のある韓国も侮れない。試合の流れが決まる1番の行方に場内の熱い視線が注がれる中、ラブオールの声がかかると、王楚欽があいさつ代わりの強烈なチキータで張禹珍からノータッチエースを奪う。
ファーストポイントでこの一撃を繰り出せるのか......。場内が王楚欽のすごさに息をのんだが、しかし、張禹珍は動じなかった。
地元の大声援を背に奮い立つ張禹珍は、ここぞという場面で渾身(こんしん)の回り込みを繰り出して最強左腕に食らいつき、場内を熱狂の渦に巻き込んでいく。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)