卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体準決勝の中国対韓国の3番、李尚洙(韓国)対馬龍(中国)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
李尚洙のカミソリ両ハンドと
キング馬龍の技が激しく交錯
世界卓球2024釜山の中でも随一の名勝負になった中国対韓国の男子団体準決勝は、1番の張禹珍(韓国)対王楚欽(中国)からヒートアップする。世界ランキング2位の王楚欽が優位という大方の予想を覆し、張禹珍が躍動。自国開催に燃えるエースが、ここぞの回り込みで世界最強左腕を沈め、韓国が先制する。
韓国が初戦を取る展開に場内が大いに沸いたが、連続失点で王手をかけられるわけにはいかない中国は、2番でエースの樊振東が気迫のプレーで林鐘勳を下し、すかさず試合を振り出しに戻す。
そして、勝敗の行方を大きく左右する3番の李尚洙(韓国)対馬龍(中国)を迎えた。
李尚洙は、切れ味鋭い両ハンドを武器に、長年にわたって強豪韓国の屋台骨を支えてきた選手だ。世界卓球2017デュッセルドルフの男子シングルスでは、当時無双を誇っていた張継科(中国)を下し、銅メダルを獲得するなど数々の実績を築いてきた。
年齢は33歳で、ベテランと呼ばれる時期に差し掛かっているが、ここまでの試合を見る限り、体の動きや両ハンドの切れ味の鋭さはいささかも衰えていない。
対する馬龍は、もはや説明の必要のない卓球界のキングだ。世界卓球男子シングルス三連覇、オリンピック男子シングルス二連覇を筆頭に、彼の輝かしい足跡をたどればきりがない。
この3番は、今夏のパリオリンピックで勇退がささやかれている35歳の馬龍にとって、中国に王手をもたらすことに加え、自身の強さをあらためて誇示する上でも負けられない一戦だ。
キャリアでは馬龍が圧倒しているが、1番の張禹珍がそうだったように、地の利を生かせば李尚洙にも十分勝機はある。
試合が始まると、李尚洙が馬龍の台上からの仕掛けにしっかり対応し、切れ味鋭いフォアハンドにつなげて王城を揺るがしにかかる。ストップやツッツキを駆使して相手の癖やわずかな穴を探り、勝負どころではそこを突く詰め将棋のようなプレーで栄光を築いてきた馬龍だが、李尚洙の鋭い両ハンドに押されてなかなか詰め切ることができない。
大歓声を受けて鋭さを増す李尚洙の両ハンドと、キングとして負けられない馬龍の技が最後まで交錯する、見応え十分の名勝負だ。
(文中敬称略。年齢は大会時)
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(文/動画=卓球レポート)