卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体準決勝のフランス対中華台北の4番、F.ルブラン(フランス)対林昀儒(中華台北)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
両エースが激突する大注目の一戦!
高速カウンター合戦の軍配はどちらに?
1997年マンチェスター大会以来となるメダル獲得を決めたフランスと、2014年東京大会以来となるメダル獲得を決めた中華台北の男子団体準決勝は、1番でF.ルブラン(フランス)がベテランの荘智淵(中華台北)を下してフランスが先制するが、2番で林昀儒(中華台北)がA.ルブラン(フランス)との激しい高速ラリーを制して、すかさず中華台北がタイに追いつく。
序盤は両チームのエースが取り合ったが、3番はベテランのゴズィー(フランス)が、ここまで要所で勝ち、チームの準決勝進出に大きく貢献していた新鋭の高承睿(中華台北)を緩急自在の技ありプレーで下し、フランスが王手をかける。
そして、試合は、4番のF.ルブラン対林昀儒のエース対決にバトンが渡った。
F.ルブランは、裏面にラバーを貼るペンドライブ型。独特なグリップ(ラケットの握り)から放つサービスは強力で、フォアハンドと裏面による攻撃とカウンターも圧倒的な精度を誇る。17歳と若いが、ヨーロッパ競技大会男子シングルス金メダルやWTTのステージの高い大会で中国選手をはじめ世界の強豪をたびたび破るなど実績も十分で、今大会ではフランスのエースを任され、堂々たるプレーでチームの勝利に貢献してきた。
矢継ぎ早に繰り出す両ハンドはこれまでに類を見ないほど攻撃的かつ安定性に優れ、兄のA.ルブランと並び、今、最も勢いがあり、世界中が警戒する選手だ。
一方、中華台北のエースを張る林昀儒も負けてはいない。長短の分かりにくいサービスから繰り出す両ハンドは、F.ルブランにひけを取らない得点力を誇る。
決勝トーナメント2回戦のスウェーデン戦での2点取りや準々決勝でのオフチャロフ(ドイツ)戦、そして、この試合の2番でA.ルブランを下したプレーは華麗かつ圧倒的で隙がない。
F.ルブランが、その攻撃力でフランスを27年ぶりの決勝へ導くのか。それとも、林昀儒が電光石火のチキータとカウンターでラストにつなぐのか。
大注目の一戦は、目にも止まらぬ高速カウンターの応酬になるが、ディープツッツキからのカウンターでF.ルブランが主導権を握る。一方の林昀儒も必殺のロングサービスとチキータで迫るが、F.ルブランに対応されて思うようにペースがつかめない。
世界の頂点に近しい二人だけあって、息をのむようなラリー続出の名勝負だが、とりわけ、まるでワンコースでフォア打ちを練習するかのようにミスをしないF.ルブランのカウンターの精度の高さは圧巻の一言だ。
(文中敬称略。年齢は大会時)
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(文/動画=卓球レポート)