卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体決勝の中国対フランスの1番、王楚欽(中国)対F.ルブラン(フランス)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
世界卓球2024釜山はいよいよクライマックス
トップで最強左腕が常勝軍団の力を見せつける
ここまで9日間にわたって激闘が繰り広げられた世界卓球2024釜山は最終日を迎え、男子団体決勝を残すのみとなった。
決勝で相対するのは、中国とフランスだ。
今大会で11連覇を目指す中国は、準々決勝で日本を3対0のストレートで下し、メダル獲得を決めると、準決勝では韓国と対戦。地元の声援を背に奮闘する韓国に2点を奪われてラストまで迫られたが、5番で王楚欽(中国)が林鐘勳(韓国)をしっかり抑え、常勝軍団の意地を見せて決勝まで駒を進めてきた。
対するフランスは、準々決勝でポルトガルとの欧州対決を制してメダル獲得を決めると、準決勝では中華台北を3対1で破り、1997年マンチェスター大会以来となる決勝進出を決めた。
世界一のかかるクライマックスで先陣を切るのは、中国が王楚欽、フランスはF.ルブラン。
王楚欽は、左腕から繰り出す強烈かつ安定感抜群の両ハンドが持ち味の選手だ。パワープレーだけでなく、サービスやレシーブなどの先手争いの技術や戦術も巧みで、現中国エースの樊振東と並び、世界最強の呼び声が高い。
準決勝の韓国戦では5番で勝利を決めたものの、1番で張禹珍(韓国)の猛攻の前に敗れ、接戦の端緒をつくってしまっただけに、この一戦にかける思いはひとしおだろう。
対するF.ルブランは裏面にラバーを貼るペンドライブ型で、多彩なサービスから繰り出す両ハンドの安定感やピッチの速さは世界でも有数だ。今大会では17歳という若さでフランスのエースを任され、その期待に十二分に応えるプレーでチームを決勝までけん引してきた。
準決勝の4番で林昀儒(中華台北)をストレートで沈めた両ハンドカウンターは異次元と呼んで差し支えない精度で、中国に対してもやる気配が満ち満ちている。
韓国戦で1点を落としたとはいえ、王楚欽の強さは圧倒的だ。しかし、準決勝の林昀儒戦の出来からF.ルブランにも大いにチャンスがある。
そんな見立てで始まった世界一への流れを決める重要な一戦は、好勝負の期待をよそに、王楚欽が圧倒的な強さを見せつける。ディープツッツキからのカウンターが武器のF.ルブランだが、腰をがっつり落として打ち込んでくる王楚欽の両ハンドの球威にラケットをはじかれ、カウンターが決まらない。
「これが常勝軍団の先陣を任された者のプレーだ!」。そう言わんばかりの王楚欽の気迫あふれるプレーに圧倒されてほしい。
(文中敬称略。年齢は大会時)
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(文/動画=卓球レポート)