卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体決勝の中国対フランスの2番、樊振東(中国)対A.ルブラン(フランス)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
世界王者の意地VS新鋭の果敢な強打
決勝にふさわしい大打撃戦の行方は?
世界卓球2024釜山のファイナルマッチとなった中国対フランスの男子団体決勝は、1番で王楚欽(中国)とF.ルブラン(フランス)が対戦。世界最強左腕の王楚欽が、破竹の成長を続けるF.ルブランの自信を粉砕するような圧倒的なプレーでストレート勝利し、中国に先制点をもたらす。
2番を戦うのは、樊振東(中国)とA.ルブラン(フランス)だ。
世界卓球2021ヒューストン、世界卓球2023ダーバンと世界卓球男子シングルスで連覇を果たし、世界ランキングナンバーワンとして今大会を戦っている樊振東は、世界随一の威力と安定性を兼ね備えた両ハンドをベースにしたオールラウンドプレーヤーだ。技術や戦術能力の高さに加え、気持ちの面でも揺らぎがほとんど見られない樊振東は、心技体そろった世界最強の選手といって異論はないだろう。
接戦になった韓国との準決勝では、地元の声援を背に躍動する林鐘勳と張禹珍をしっかり抑えて2点を挙げ、最強中国のエースとして隙のないプレーを続けている。
対するA.ルブランは、多彩なサービスと強力な両ハンドで、弟のF.ルブランとともに次代の盟主を狙う選手だ。準々決勝のポルトガル戦、準決勝の中華台北戦では奮戦及ばず敗れているため、相手が最強の樊振東とはいえ、この決勝では期するものがあるに違いない。
第1ゲームが始まると、樊振東がA.ルブランの強打としっかり打ち合って8-4とリードを広げる。このまま樊振東が逃げ切って試合の主導権を握るかに思われたが、終盤に珍しく樊振東にミスが続き、それに乗じたA.ルブランが積極果敢な攻撃で第1ゲームを逆転すると、試合はもつれていく。
第2ゲームは樊振東が打ち勝ってゲームを返すが、第3ゲームはA.ルブランがスタートから抜け出し、後陣からのミラクルショットも決めて物にし、勝利に王手をかける。
決着が近づく第4ゲーム、臆することなく猛攻を仕掛けるA.ルブランと、それを必死に受け、打ち返す樊振東のラリーは一進一退で終盤までもつれるが、攻め手を緩めないA.ルブランが10-9とマッチポイントを握る。
決勝の舞台で世界王者が敗れるのか。波乱の予感に場内が固唾(かたず)をのむ中、しかし、樊振東が王者の意地で窮地から脱するべく、渾身(こんしん)のプレーを繰り出していく。
世界王者を向こうに回して目を疑うような強打をびしばし決めるA.ルブランと、その猛攻に耐えつつ反撃する樊振東による大打撃戦は、世界一を決める決勝にふさわしい、まさに名勝負だ。
(文中敬称略。世界ランキングは大会時)
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(文/動画=卓球レポート)