昨年11月のドイツオープン以降、国際大会から遠ざかっていた張継科が、ワールドツアー・香港オープンから中国代表としてカムバックした。ロンドン五輪をはじめ、数々のビッグタイトルを総なめにした男の代表復帰を記念し、特別企画として張継科の基本打法を紹介する。
今年3月に北京の中国ナショナルチームトレーニングセンターで撮影した映像から、今回は張継科のフォアハンドドライブを紹介しよう。
①ロングボールに対するフォアハンドドライブ
【バックスイングのポイント】
スイングのパワーを右足にためる
中国の卓球用語に「爆発力(バオファリー)」という言葉がある。語感の通り、爆発力とはボールを打つときの強さを表す言葉だ。「あの選手は爆発力があるから将来有望だ」や「あの選手は爆発力が足りないから上に行くのは難しい」のような使い方をし、中国の指導者が選手を評価する上で指針にする要素だ。
そして、張継科は「自分の長所は爆発力」と語るように、打法の爆発力に優れている。このことが、彼が中国首脳陣に見いだされ、数々のビッグタイトルを獲得できた大きな要因だといえよう。
それでは、張継科のロングボールに対するフォアハンドドライブのポイントを紹介する。
張継科のように威力のあるフォアハンドドライブを打つためには、バックスイングの時に、腰を右にひねりながら、右足に重心をかけることが重要なポイントだ。この準備によって右足に力をためることができるので、スイングが力強くなる。
バックスイングでは、わきを軽く締めることも意識してみよう。わきを締め、ひじを体の近くに保つと、ボールに重心移動の力や腰の回転の力を伝えやすくなる。加えて、準備でひじを体の近くに保っておくと、飛んできたボールに対してラケットを最短距離で動かせるので、「早い打球点を捉えやすい」「正確に打球できる」などのメリットも生まれる。
【スイングのポイント】
右足にためたパワーをボールに伝える
バックスイングで右足にかけたパワーを、ボールにしっかり伝えるようにスイングすることが、張継科のフォアハンドドライブの力強さの秘訣だ。右足で床を強く押し、左足へ重心を移動させる勢いでラケットを斜め上に力強く振り抜こう。
ひじをしっかりたたむようにスイングしている点も参考にしたい。ひじをたたみながらスイングすると、バックスイングでためた力を「ひじ→手首→指」の順に効率よく伝えることができる。
張継科のフォアハンドドライブは、中国卓球用語でいう「爆発力」に秀でているが、爆発力とはボールを力まかせに打つことではなく、スイングの力を効率よくボールに伝えることである。張継科の合理的で力強いスイングには、このことがよく表れている。
②下回転のボールに対するフォアハンドドライブ
【バックスイングのポイント】
低い姿勢で右足に重心をかける
下回転のボールに対してフォアハンドドライブするときは、ボールをこすり上げられるよう低い姿勢でバックスイングすることが先決になる。両足のひざを深く曲げ、飛んでくるボールの高さに目線を合わせるように姿勢を低くして、ラケットを低い位置に引こう。
このケースでバックスイングするときは、ロングボールに対するときよりも腰を右に大きくひねり、右足に重心をしっかりかけることも大切なポイントだ。この大きめの準備によってスイングがより力強くなるので、打球の安定性や威力が増す。
【スイングのポイント】
早い打球点を捉えて、斜め上に力強くスイングする
低い姿勢でバックスイングしたら、ラケットを斜め上に振り上げてボールをしっかりこすり上げるようにスイングする。右足で床を強く押す力と腰の回転を使って、ラケットを力強く斜め上に振り上げよう。
張継科のスイングで特に注目してほしいのが、「打球点の早さ」だ。張継科は体よりも前の早い打球点でボールを捉えているが、この位置で打球すると、スイングのパワーをボールに伝えやすくなる上に、打球後の体の上下動が抑えられるので次球への戻りが素早くなる。下回転に対するフォアハンドドライブの精度を高める上で、ぜひ参考にしたい打球点だ。
(まとめ=猪瀬健治)