横回転ショートサービス
2018年3月の世界ランキングで1位に輝いたティモ・ボル(ドイツ)。若手が次々に頭角を現し、ルール変更が繰り返される中にあって、37歳になったボルの強さが色あせないのはなぜか。「ボルが特別だから」と思考を止めるのはもったいない。長きにわたりトップレベルを維持しているボルの強さの仕組みを知ることは、多くの選手にとって上達の一助になるはずだ。
今回の特別企画では、ボル本人の自己分析を交えて、ボルの強さを紐解いていく。
■ボルの自己分析
「数センチにこだわってサービスを出す」
私のサービスは、回転やコースなどいろいろなバリエーションがあるのが特徴だと思います。長さや回転に気を配っていろいろなコースにサービスを出すと、相手は予測が立てにくいので、慣れることができず、正確なレシーブができなくなります。数センチの差にこだわって出すのが私のサービス戦術で、それが自分の最大の長所の一つだと思います。
■ボルの横回転ショートサービス
ポイント① 第1バウンドはエンドライン近く
数センチ単位でコントロールするというボルのサービスは、彼の両ハンド攻撃を引き出すための重要な導線になっている。ボルは左右の横回転系サービスを使うが、まずは横回転(左横回転。右利きの選手の場合は右横回転)ショートサービスを紹介しよう。
「第1バウンドはエンドラインの近くを狙って、第2バウンドが相手コートのネット際あたりになるようコントロールします。そうして、サービスを短く出すことが重要です」とボルはポイントを述べる。
一般に、ショートサービスを出すときは、第1バウンドはネット寄りを狙う。だが、ボルはロングサービスを出すときと同じようにエンドライン付近に第1バウンドさせてショートサービスを出すという。このテクニックで相手にサービスの長さを読ませないのが、ボルのサービスが効く大きな要因だ。
ポイント② コンパクトなスイングで
コントロールと戻りの速さを優先
続いて、スイングを見てみよう。ボルのスイングはバックスイングからフォロースルー(打球後のラケットの動き)までの動きが非常に小さい。このシンプルで小さいスイングが、正確なコントロールと3球目への素早い戻りを可能にしている。
動作では、頭を低くしながらスイングしている点を参考にしてほしい。頭を低くし、前傾を深くする勢いを利用すると、インパクト(打球の瞬間)に力が入りやすいので、小さくスイングしてもボールに回転をかけやすい。また、前傾を深くして頭とインパクトを近づけると「打球タイミングが計りやすい」「コントロールがよくなる」などのメリットも生まれる。
(取材/文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘 動画=小松賢)