中国男子は総じてパワフルな選手が多いが、パワーではなく、速さで頭角を現している選手がいる。その名は、林高遠(リン ガオイェン)。安定性が極めて高い前陣カウンタープレーで世界ランキングを駆け上がっている、中国期待のサウスポーだ。
この特別企画では、林高遠の技術を、中国ナショナルチームの合宿所で撮影した連続写真で紹介する。第1回は、前陣バックハンドドライブにスポットを当てよう。
「自分の特徴はバックハンドで、これからもこの特徴を磨いていきたい」と本人が語るように、林高遠の最大の武器はバックハンドだ。特に、前陣でのバックハンドドライブは、世界ナンバーワンといっても差し支えない精度とピッチの速さを誇る。
ポイント①
腕だけでなく、上体を軽く起こす勢いでスイングする
写真A-1~6は、ロングボールに対する前陣でのバックハンドドライブを斜め前から撮影した写真だ。
林高遠はわきを空けてひじを体から離し、ラケットの先をバック側に向けるように手首をひねって準備したら(写真A-2)、ラケットの先を上に向けるように手首をひねり返して斜め上にコンパクトにスイングしている(写真A-3~5)。
特に注目してほしいのが、姿勢の変化だ。林高遠はバックスイングで前傾を深めるように姿勢を低くすると(写真A-1~2)、スイングでは上体を軽く起こすように姿勢を高くしているが(写真A-3~5)、こうすると、スイングの力強さや安定感が増す。
このように、腕だけでなく、上体を軽く起こす勢いを利用することにより、林高遠はコンパクトなスイングでも打球に威力を出すことができる。
ポイント②
つま先の方で床を押す勢いで上体をスムーズに起こす
上体を軽く起こすのが林高遠のスイングの特徴だが、そのためには足の動きが重要になる。
林高遠の前陣バックハンドドライブを横から撮影した写真(B-1~4)の左足に注目すると、打球後にかかとが浮いている様子から、つま先の方に重心をかけてスイングしていることが分かる(写真B-3~4)。このように、利き足である左足(右利きの選手は右足)のつま先の方で床を軽く押す勢いを利用すると、上体が自然に起き、それに伴ってスムーズにスイングすることができる。加えて、このように床を押す勢いを使うと、打球タイミングが計りやすいメリットも生まれる。
「前陣でバックハンドドライブする」というと腕を速く動かそうと考えがちだが、腕だけのスイングでは安定性や威力は得られないし、打球タイミングも狂いやすい。林高遠の前陣バックハンドドライブは、体全体を使ってスイングしているからこそ精度が高いのだ。
(解説=猪瀬健治 取材/写真=岡本啓史 取材/動画=小松賢)