電光石火の両ハンド攻撃で、8月に行われたインターハイを制した戸上隼輔(野田学園高)。特別企画として、戸上がインターハイを制するために磨いた技の数々を明らかにしていく。高校生の頂点に立つ選手の技や思考からは、必ずインスピレーションが得られるはずだ。
第1回は、インターハイで大きな効果を発揮したサービスを取り上げる。
縦回転系サービスのメリットは、
変化のつけやすさとコントロールのしやすさ
近年では左右の横回転系サービスを出す選手が多いが、戸上のサービスの組み立ては縦回転系サービスが中心だ。
「縦回転系サービスはいろいろなフォームで出せるので、相手に変化を分かりにくくしやすいと思います。それから、コントロールが簡単なことも、縦回転系サービスの特徴だと思います」と、戸上は縦回転系サービスのメリットを挙げる。
今回は、下回転を強くかけたサービスと、下回転をほとんどかけないナックル性サービスという、2つのサービスを出すときのポイントを戸上が紹介してくれた。
■下回転サービスのポイント
手首のしなりを使って
回転を強くかける
下回転サービスは、打球面を上向きにし、ラケットの先を後ろへ向けるように手首をひねってバックスイングしたら、ひねった手首を戻しながらボールの下あたりをこすることが基本だ。戸上もこの基本通りにスイングしているが、インターハイで対戦相手がネットミスを繰り返していたことから分かるように、戸上の下回転サービスは非常によく切れている。
「ボールをこする瞬間に手首のしなりを使うと、自然とボールを強くこすることができます。そのため、『手首のしなりを使って回転をかけるコツをつかむ』ことが、下回転サービスを強く切るためには大切です」と戸上は下回転サービスを強く切るポイントを話す。
『手首のしなり』というのがピンとこない選手は、力加減を意識してほしい。具体的には、ボールをこする瞬間にだけ手首に力を入れ、それ以外は手首から余計な力を抜くことを意識してみよう。この力加減でスイングすると、インパクト(打球の瞬間)でラケットの動きが速くなるので、手首をしならせるコツがつかめるだろう。
■ナックル性サービスのポイント
下回転サービスのように速くスイングし
打球面を立てて回転を抑える
縦回転系サービスは、よく切れた下回転サービスと、その布石となるナックル性サービスとを組み合わせることで初めて効果を発揮する。ナックル性サービスとは、意図的に下回転をかけないサービスのことだ。
戸上は下回転サービスと似たフォームからナックル性サービスを出すため、相手は回転量の判断が難しくなる。効果的なナックル性サービスを出すためには、スイングの速さが重要だと戸上は語る。
「ナックル性サービスは、下回転サービスのフォームとどれだけ似せられるかが勝負です。そのために僕が心掛けているのは、『手首を使ってできるだけ速くスイングする』ことです。下回転サービスと同じように手首を使った速いスイングからナックル性サービスを出すと、相手に『下回転が強くかかっていそうだ』と思わせることができます。
手首を使いつつ、下回転がかかるのを抑えるためには、打球面を立てることがコツです。打球面を立てると、手首を鋭く使ってもボールを強くこすれません」
手首を鋭く使い、下回転を強くかけたかのように速くスイングしつつ、下回転が強くかからないよう打球面を立てる。このテクニックで回転量をカムフラージュできるため、戸上の縦回転系サービスはよく効くのだ。
■縦回転系サービスのインパクト比較
(取材/文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘 動画=小松賢)