世界で活躍するペンホルダー、黄鎮廷(ウォン・チュンティン/香港)。この特別企画では、黄鎮廷の最大の武器である「裏面ドライブ」を、本人のコメントを交えながら分かりやすく解説していく。
裏面ドライブとは、ペンホルダーの裏面に裏ソフトラバーを貼り、シェークハンドのバックハンドドライブのようにスイングする技術で、「バックの攻撃力が弱い」というペンホルダーの弱点を補うために生まれた技術だ。
第3回は、下回転のボール(ツッツキ)に対して裏面ドライブするときのポイントを紹介しよう。
【構えのポイント】
ツッツキに対して詰まらないよう
台から適度に距離を取る
ツッツキに対する裏面ドライブは、下回転サービスを出した後やストップレシーブした後など、こちらが台の近くで下回転のボールを送った後に使うケースが多い。
ここでは、下回転サービスを出した後、ツッツキに対して裏面ドライブするパターンを例に挙げて、ポイントを紹介していこう。
この技術を成功させるためには、サービスを出した後、相手のツッツキに対して詰まらないようポジショニング(位置取り)することが先決になる。
フォアハンドで下回転サービスを出した後、相手がバック側にツッツキしてくると分かったら、右足→左足の順に足を後ろに運び、台から適度に距離を取ろう。このように、台から少し距離を取って構えると、体の前にスペースができるので、ツッツキに対して詰まることなくスイングすることができる。
後ろに動くときは、「体の正面で打球できるように位置を調整する」「上体が起き上がらないように注意する」の2つも意識しよう。
【バックスイングのポイント】
ボールに目線を合わせるように
両足のひざを曲げて姿勢を低くする
サービスを出した後、台から適度に距離を取ったら、低い姿勢でバックスイングすることがポイントだ。両足のひざを深く曲げ、ボールに目線を合わせるように姿勢を低くしよう。そうすると、「下から上(斜め上)にスイングできるので、ツッツキの下回転に負けにくい」「ボールを正確に捉えやすい」などのメリットがある。
腕の動きは、前回、前々回紹介した裏面ドライブのバックスイングと同じように、ひじを体から離し、ラケットの先をバック側へ向けるように手首をひねっておこう。
フリーハンド(左腕)を90度くらい曲げ、その形をキープして体のバランスを保っているところも参考にしてほしい。
【スイングのポイント】
「床から重い物を持ち上げる」イメージで
ラケットを下から斜め上に振り上げる
「ツッツキに対しては、単に下から上ではなく、ラケットを少し"前"に動かす力が必要」と黄鎮廷は語る。
台から少し距離を取り、低い姿勢でバックスイングしたら、ラケットを下から斜め上方向へ振り上げることがポイントだ。そうすると、ボールをこすり上げつつ、打球にスピードを出すことができる。 打球点は、ボールがバウンドの頂点から少し落ちてきたあたりを狙おう。
ツッツキに対して裏面ドライブするときは、腕だけを動かすのではなく、「体全体の力を使う」ことも意識してほしいポイントだ。
具体的には、両足で床を押しながら、バックスイングで前傾させた上体を起こすようにスイングしよう。このように体全体を使うとスイングが力強く安定し、ツッツキの回転に負けにくくなる。
思うように体が使えない選手は、床から重い物を持ち上げるイメージでスイングしてみると、足の力や上体を起こす力が自然と使えるようになるだろう。
(文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘 動画=小松賢)