多くのボールを使い、連続して打球する多球練習は、強くなるために必ず取り入れたい練習方法です。
この特集では、正しい球出しの方法から効果的な練習パターンまで、ビギナーが知りたい多球練習のいろはを、宇田直充氏(うだ卓代表)が丁寧に解説してくれます。
4回目は、フットワークの基本を身に付ける多球練習を紹介しましょう。
講師プロフィール 宇田直充(うだなおみつ/うだ卓代表)「最新の世界基準の技術を幼児から高齢の方まで」をコンセプトに掲げる卓球場「うだ卓」の代表を務める。2020年全日本選手権大会男子シングルス優勝の宇田幸矢(明治大)は愛息。宇田幸矢を幼少の頃から育て上げたほか、日本卓球協会の強化スタッフを務めるなど、確かな指導実績を持つ |
※本文の技術解説は練習する選手を右利きプレーヤーと想定しています
<今回の練習メニュー>
・フットワークはステップアップの鍵!
・シンプルな多球練習で基本の足の動きを身に付ける
・全面をフォアハンドで打球できるフットワークを身に付ける
・バック側への回り込みとフォア側への大きな動きをワンセットで身に付ける
・フットワークの距離感を身に付ける
フットワークはステップアップの鍵!
打球の精度はフットワークで決まる
試合では、ボールがどこに来るのか分かりません。そうしたボールに対して安定して打球するためには、最適な位置まで動く必要があります。そして、最適な位置へ動くために必要なのが、フットワークです。
フットワークが良ければ、最適な打球位置へ素早く動くことができるので、その分、打球の安定性や威力を高めやすくなります。
打球が入るかどうかの決め手になるフットワークの基本を身に付けることは、初心者がステップアップを目指す上で必須です。
フットワークを身に付けるためには多球練習が最適
フットワークの基本を身に付けるためには、多球練習が最適です。多球練習は、練習する選手の状態に応じて送球のコースやタイミングをコントロールしやすいからです。
例えば、フットワークのスピードが課題の選手には、ぎりぎり間に合いそうなタイミングを見計らって、できるだけ速いピッチで送球すると、スムーズな上達が見込めます。そして、練習する選手の次の準備ができていない場合には、送球のピッチを遅くすると練習をスムーズに続けることができるでしょう。
挙げた例のように、多球練習では、練習する選手の状況や課題に応じて練習の難度を自由にコントロールすることができます。そのため、効率よくフットワークを身に付けることができるでしょう。
シンプルな多球練習で基本の足の動きを身に付ける
【練習の内容】
左右に1本ずつフットワークする多球練習
まずは、左右に1本ずつ規則的に動くシンプルな多球練習です。特に初心者はこの練習をしっかり行って、フットワークの基本を身に付けましょう。
送球する人は、フォア側→バック側の順に1本ずつ交互にロングボールを送球します。この送球に対し、練習する選手は左右に動いて、全てフォアハンドドライブで打球します。
練習時間は、1分半を目安に行ってください。
【送球する人のポイント】
練習する選手がフットワークしやすいタイミングで送球する
この多球練習は、左右に動くフットワークの足の運び方の基本を身に付けることが目的です。この目的を踏まえ、送球する人は、練習する選手がフットワークの基本を身に付けやすいよう、コースやピッチを調整して送球しましょう。
特に、これからフットワークを覚えるという初心者に対して送球する場合は、足の運び方を覚えやすいよう、ゆっくりした送球を心掛けてください。
【練習する選手のポイント】
左右にフットワークする基本の足の運び方を身に付ける
この多球練習は、左右にフットワークする時の足の動かし方の基本を覚えることが目標です。
フットワークの基本は、初めに動きたい方向へ近い方の足を小さく1歩出し、これをきっかけにして遠い方の足、近い方の足の順に動かすことが基本です。
具体的に説明すると、バック側へ(自分から見て左側へ)動く時は、左足を小さく1歩出し、次いで右足→左足の順に足を運んで移動します。一方、フォア側へ(自分から見て右側へ)動く時は、右足を小さく1歩出し、左足→右足の順に足を動かして移動します。
説明したフットワークの基本を念頭に置き、しっかり打球してから動くことを意識して練習に取り組んでください。
足の動かし方の基本ができるようになってきたら、「狙ったコースへ打球する」「回転をしっかりかけてフォアハンドドライブする」の2つを意識して、打球の質を高めましょう。
バック側へのフットワーク
フォア側へのフットワーク
全面をフォアハンドで打球できるフットワークを身に付ける
【練習の内容】
フォア側→ミドル→バック側→フォア側の順にフットワークする多球練習
次は、フォア側→ミドル(センターライン付近)→バック側の3点を順に動いた後、フォア側に大きく動く多球練習を紹介します。
送球する人は、練習する選手のフォア側→ミドル→バック側→フォア側の順にロングボールを連続して送球します。
練習する選手は、全てフォアハンドドライブで打球します。
練習時間は、1分半を目安に行ってください。
【送球する人のポイント】
選手の上達度合いを見ながら、徐々にピッチを速くする
送球する人は、練習パターン通りに正確に送球することを心掛けてください。
初心者に対して送球する場合は、練習する選手が足の動かし方を覚えやすいよう、初めはゆっくりしたピッチで送球してください。練習する選手が足の動かし方を覚え、スムーズに動けるようになってきたら、徐々に送球のピッチを速くしましょう。
【練習する選手のポイント】
斜め前に動くイメージで、バック側からフォア側へ大きく動く
この多球練習は、バック側からフォア側へ大きめに動いてフォアハンドドライブするパターンを身に付けることが大きな目標です。
バック側からフォア側へ大きく動く時は、後ろへ下がるのではなく、前(斜め前)もしくは真横へ動くイメージでフットワークしましょう。そうすると、ボールにより早く近づくことができるので、打球の精度が高まります。
フォア側に大きく動いてフォアハンドドライブした後は体のバランスをしっかり保ち、次にミドルに送られるボールに対してきちんと動いてフォアハンドドライブしましょう。
バック側で打球してからフォア側へ大きく動いてフォアハンドドライブ
バック側への回り込みとフォア側への大きな動きをワンセットで身に付ける
【練習の内容】
バック側2本→フォア側1本の順に両ハンドを切り替えながらフットワークする多球練習
続いて、バック側への回り込みとフォア側への大きな動きを身に付けることを目的とした多球練習を紹介します。
送球する人は、練習する選手のバック側へ2本→フォア側へ1本の順にロングボールを連続して送球します。
練習する選手は、1本目にバック側に送られるボールに対してはバックハンドドライブ、2本目はバック側に回り込んでフォアハンドドライブし、次にフォア側に送られるボールに対して、フォア側へ大きめに動いてフォアハンドドライブします。
練習時間は、1分半を目安に行ってください。
【送球する人のポイント】
動きが大きいため、ピッチに配慮して送球する
この多球練習で練習する選手は、先に紹介した「フォア側→ミドル→バック側→フォア側の順にフットワークする多球練習」よりも大きく動きます。そのため、送球のピッチには十分配慮してください。
初級者に対して送球する場合は、ゆっくりしたピッチで送球することから始め、進歩の度合いに応じて送球のピッチを速くしていきましょう。
【練習する選手のポイント】
しっかりフットワークし、打球に回転をかける
バック側への回り込みと、その次のフォア側への大きな動きを素早くしっかり行うことを心掛けて、この多球練習に取り組んでください。特に、回り込んだ後、フォア側へ大きく動く時は、先述したように、前(斜め前)または真横へ動くことを意識しましょう。
また、送られる全てのボールに対して、打球にしっかり回転をかけることを心掛けてください。
バック側2本→フォア側1本のフットワーク
フットワークの距離感を身に付ける
【練習の内容】
バック側→ミドル→バック側→フォア側の順に両ハンドを切り替えながらフットワークする多球練習
最後は、フットワークの距離感を身に付けるために効果的な多球練習を紹介します。
送球する人は、練習する選手のバック側→ミドル→バック側→フォア側の順にロングボールを連続して送球します。
練習する選手は、バック側に送られるボールに対してはバックハンドドライブ、ミドルとフォア側に送られるボールに対してはフォアハンドドライブで打球します。
練習時間は、1分半を目安に行ってください。
【送球する人のポイント】
パターンに忠実に、正確な送球を心掛ける
フォア側へ動く時の距離の調整力を身に付けることが、この多球練習の第一の目的です。この目的を踏まえ、送球する人は、パターンに忠実に、正確な送球を心掛けてください。
特に、ミドル(センターライン付近)とフォア側(フォア側のサイドライン付近)はコントロールが曖昧になりがちなので、正確な送球を意識しましょう。
【練習する選手のポイント】
ミドルとフォア側へ、それぞれ正確にフットワークする
この多球練習では、バックハンドドライブした後、ミドルとフォア側へ、それぞれ異なる距離を正確に動くことがポイントです。
異なる距離を正確に動くとはいえ、バック側からミドルへ送られるボールに対してフォアハンドドライブする場合は、ほとんど足を動かす必要はありません。右足を小さくステップして微調整し、体勢が詰まらないよう上体をしっかりひねってバックスイングしてからフォアハンドドライブしてください。足をほとんど動かさないとはいっても、小さなステップもれっきとしたフットワークですから、おろそかにしないようにしましょう。
一方、バック側からフォア側へボールが送られる場合は、打球する位置が体から遠く離れないよう大きく素早く動き、ボールまでしっかり近づいてください。
フォアハンドドライブ、バックハンドドライブとも、回転をしっかりかけることも意識して、この多球練習に取り組みましょう。
バック側→ミドル→バック側→フォア側のフットワーク
↓動画はこちら
(監修=宇田直充、取材/まとめ=卓球レポート)