幼少より「中華台北の至宝」として注目され、今や世界のトップ選手としての地位を確固たるものにした林昀儒。以前、卓球レポートでは林昀儒のサービスに注目したが、今回の特別企画では彼のチキータにスポットを当てたい。
現代卓球ではトップ選手のほぼ全員がチキータを使うが、その中でも林昀儒のチキータの得点力は抜きん出ている。「あいつのチキータはマジでやばい」。そうトップ選手たちが異口同音におそれる神業(かみわざ)のようなスピードが速くて鋭いチキータのコツを、林昀儒本人のコメントを交えながら紹介していこう。
第2回は、バック前に来た下回転サービスに対するスピードチキータを取り上げる。
※本文の技術解説は左利きプレーヤーをモデルにしています
サービスのコースに応じて踏み込む足を変える
--今回は、バック前に来た下回転サービスに対してスピードチキータをするポイントを教えてください。
林昀儒(以下、林) クロスの場合は、距離が長いので思い切って力を入れて打つようにしています。
--ボールに近づくときは右足と左足、どちらの足を踏み込みますか?
林 フォア前に来たサービスをチキータする場合は基本的に左足(右利きの選手は右足)を踏み込みますが、バック前に来たサービスに対しては、飛んできたサービスの位置に応じて、どちらかの足を踏み込んでチキータします。
--ほかのトップ選手から「バック前に来たサービスをチキータする際は動く勢いを使えないので力を入れにくい」という話を聞きます。この点についてはいかがですか?
林 そのように感じたことはありません。というのも、サービスがどのコースに来ても、動きながら打つことはないからです。
バック前に来た下回転サービスをスピードチキータするときの足の動き
フォア前に来たサービスをチキータする場合は左足(右利きの選手は右足)を踏み込むことが基本だが、バック前に来たサービスをチキータする場合は、コースに応じて左右どちらかの足を踏み込むという林昀儒。
具体的には、同じバック前でもセンターライン寄りに来たサービスやネット際に短く来たサービスに対しては左足(右利きの選手は右足)、バック側のサイドライン寄りに来たサービスに対しては右足(右利きの選手は左足)を踏み込むことが基本だ。
どちらの足を踏み込む場合も、床すれすれに足を運んで体の上下動を抑えることを意識しよう。
バック前に来た下回転サービスに対するクロスへのスピードチキータ
バック前に来た下回転サービスをクロスにチキータするときは、思い切り力を入れるという林昀儒。ラケットを横方向へ振り抜くようにフォロースルー(打球後のラケットの動き)を取るイメージで前腕(ひじから先)全体を鋭く動かしてスイングしよう。
そのほかのポイントとしては連続写真の頭の位置に注目だ。林昀儒の頭の位置は打球準備から(写真1)打ち終わりまで(写真8)ほとんど変わっていないが、このように頭の位置が安定していると「目線が安定して目測が正確になる」「スイング時に力を入れやすい」などのメリットが生まれる。林昀儒のように鋭くて安定性の高いスピードチキータをマスターしたいと考えている選手は、スイング中の頭の位置を安定させることを意識してみよう。
バック前に来た下回転サービスに対するストレートへのスピードチキータ
クロスに比べて距離が短いストレートへスピードチキータする場合は、より弧線をつくることを意識するのが安定性を高めるポイントだ。クロスへ打つときよりもラケットを上方向へ振り上げて回転をしっかりかけつつ、ラケットを横方向へ振り抜くようにフォロースルーを取ってスピードを出そう。クロスにスピードチキータするときと同様、スイング中は頭の位置を安定させることもポイントだ。
最終回は、チキータの天敵ともいえるロングサービスを出されたときの対応について林昀儒が紹介してくれる。
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(取材/まとめ=卓球レポート)