元ナショナルチーム監督として日本男子をけん引し、現在はTリーグの強豪・木下マイスター東京の監督を務める倉嶋洋介氏が、その確かな視点で現代卓球を考察する新企画。最先端のプレーはもちろん、これからトレンドになりそうなプレーを切り出し、解説から技術指導まで、さまざまな角度から一歩先へ行くためのヒントを提案していく。
今回は、前回話していただいた「勢いのあるサービス」を出すための技術的なポイントについて教えていただいた。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています
※撮影協力=吉田雅己(木下グループ)
勢いのあるサービスにはさまざまなメリットがある
サービスは、1球目の攻撃です。先手を取れるような攻めのサービスを出すことができれば、試合を優位に進めることができます。そして、そのためのポイントの1つが、前回お話しした「勢いのあるサービス」です。
全身を使って迫力のあるフォームで勢いよくサービスを出すと、相手に大きなプレッシャーを与えることができます。勢いのあるフォームは相手が必然とロングサービスを警戒するため、そこからショートサービスを出すと相手の意表を突きやすいでしょう。加えて、フォームに勢いがあると必然とサービスに回転やスピードを与えやすいので、サービスの威力そのものも高まりやすくなります。
一方、体を使わずに手だけでサービスを出すと、相手にコースや変化が分かりやすいだけでなく、サービスに十分な回転やスピードを与えることができません。
今、世界で勝っている選手の多くは、勢いのあるフォームでサービスを出しています。ぜひ、今回紹介する技術的なポイントを参考にして、勢いのあるサービスを身に付けてください。
勢いのあるサービス・勢いのないサービス
体重移動を生かしてスイングを速くする
勢いのあるサービスを出すためには、体重移動が大切です。右利きの選手の場合は、バックスイングで右足に体重をしっかり乗せます。そこから、バックスイングで乗せた体重を左足に勢いよく移動しながらスイングします。このように体重移動を使うとスイングが速くなり、インパクト(打球の瞬間)の一点に力を集中することができるので、相手に威圧感を与えるようなフォームでサービスを出すことができます。
つまり、「体重移動をしっかり使ってスイングを速くする」ことが、勢いのあるサービスを出すための重要なポイントになります。このポイントは、どのような回転のサービスを出す場合でも同じです。
バックスイングはコンパクトに
勢いのあるサービスを出す上では、「コンパクトにバックスイングする」ことも心掛けてほしいポイントです。
フォームに勢いを出そうとすると、どうしてもバックスイングでラケットを大きく引こうとしてしまいがちですが、バックスイングが大きいと必然と腕を動かす範囲が大きくなるのでインパクトが不安定になり、スイングスピードを速くすることが難しくなります。
勢いのあるサービスを出すためには、コンパクトなバックスイングを心掛けて、前腕(ひじから先)を中心にラケットを速く動かすことを心掛けましょう。
勢いのある横下回転サービス
コントロールよりもフォームに勢いを出すことを優先
勢いのあるフォームでサービスを出すと、相手にプレッシャーを与えられる半面、コントロールが難しいものです。しかし、コントロールを優先してスイングが小さくなってしまうと相手が脅威と感じるようなサービスを出すことはできません。
そもそも、フォームに勢いがある時点で、相手にプレッシャーを与えることができています。加えて、コントロールが適度に乱れた方が、相手にとってはサービスの長短や変化が読みにくいものです。
このことを踏まえ、コントロールにはあまり神経質にならず、フォームに勢いを出すことを優先してください。
勢いのあるサービスを練習する際のポイント
勢いのあるサービスを練習する際は、相手コート(レシーバー目線)から自分のサービスを携帯などで撮影し、実際に自分のサービスに勢いがあるのかどうかを確認するとよいでしょう。サービスは、相手からの見え方がとても重要です。サービスを実際に撮影して、相手から自分のサービスがどう見えているのかをチェックする習慣をつけると、上達が早まると思います。
加えて、練習する際は、前述したように「体重移動」に加え、「踏み込み」を意識してください。具体的には、右利きの選手がフォアハンドでサービスを出す場合、右足から左足への重心移動と、左足を強めに踏み込むよう意識してサービスを出しましょう。卓球の技術において体重移動と踏み込みは、スイングを速くするため、威力を増すためにとても重要なポイントです。フォアハンド、バックハンドとも体重移動をしっかり使って踏み込んで打球することでボールの質が高まりますが、サービスも同様です。サービスに思うように勢いが出ないという選手は、ぜひ体重移動と踏み込みを意識して練習に取り組んでください。
次回も、世界の傾向や今後の予測を踏まえた上で、今、身に付けるべきサービスについてお話ししたいと思います。
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(取材/まとめ=卓球レポート)