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教えて!上D <ドイツ編>
第5回「ブンデスリーガのデビュー戦の様子は?」


「卓球界の賢人」こと上田仁が、その確かな実力と見識をもとに、さまざまな質問に答える人気企画「教えて!上D(ウエディー)」が3年ぶりに復活!昨年の8月から日本を離れ、ドイツに拠点を移した上Dが、卓球についてはもちろんのこと、ドイツやヨーロッパ各地への転戦の日々についても伝えてくれます。
 今回は、ドイツ・ブンデスリーガのデビュー戦について伺いました。

Q.ブンデスリーガでのデビュー戦について教えてください

ブンデスリーガでのデビュー戦勝利おめでとうございます!デビュー戦の試合内容や心境について聞かせてほしいです。(どんと来いかねきち:卓球レポートスタッフ)

A.「JIN UEDA!」とアナウンスされた時は、思わず涙が出そうになりました

 新年を迎えて早々の1月5日に、僕のブンデスリーガデビュー戦となるブレーメンとの試合がホームで行われました。所属チームのケーニヒスホーフェンは後半戦の初戦ということもあり、会場は超満員でした。その中でデビュー戦を迎えるということで、ワクワクした気持ちと緊張とが入り交じった不思議な感覚でしたね。入場する際のアナウンスで「JIN UEDA!」とコールを受けた時は、「ああ、ドイツへ来たんだな」と感慨深くなり、思わず涙が出そうになりました。

ブンデスリーガのデビュー戦の舞台に立った上田選手

上田選手のデビュー戦会場は超満員

 僕はエース起用で1番に出場し、ゲラシメンコ(カザフスタン)と対戦しました。彼のことは昔から知っていましたが、今回が初対戦です。ゲラシメンコは昨年末にWTTで優勝していて、その試合映像を見ると昔より粗さがなくなり、とにかく大きいラリーに強い印象があったので、得意のラリー展開に持ち込ませないようにゲームを組み立てようと考えて試合に臨みました。
 特に、フォア前が得意そうではなかったので、そこからゲームを組み立てましたが、相手の得意なラリーにしないとはいえ、必ずラリーにはなります。ラリーになったら、コース取りを意識して相手をすぐ台から離し、そこで強く打ちすぎないよう緩いボールなどで打ちミスを誘う展開を心掛けました。
 こうしたゲームプランがうまく決まったことに加え、初対戦で相手が僕のことをやりにくそうにしていたことも重なってか、終始ゲームの流れを相手に渡さずにプレーすることができました。デビュー戦としては、出来過ぎなほどに完璧な内容だったと思います。

 相手のエースは世界卓球ファイナリストの経験もあるファルク(スウェーデン)だったので、4番でファルクとの対戦を楽しみにしていましたが、続く2番のゼリコ(クロアチア)が素晴らしいプレー内容でファルクを撃破してくれたので、チームも3対0のストレートで勝利を収めることができました。試合後にチームメートや関係者、サポーターら多くの方が祝福してくれましたが、なにより家族に感謝です。

 契約ミスでブンデスリーガの前半戦に出場できないと聞いた時は、正直に打ち明けると気が滅入りました。当時、日本でドイツへ向けて練習に打ち込んでいましたが、計画が全て台無しになった気がして、確か2週間ほど卓球をやらなかったと記憶しています。結果的に、昨年の前半はオーストリアのウィーナー・ノイシュタットでチャンピオンズリーグに出場できることが決まりましたが、うれしいより悲しい方が大きかったですね。なんでブンデスリーガじゃないんだと。
 でも、今思えばその登録ミスによって忘れかけていた反骨心を思い出しました。「こっちは腹くくってドイツまで行くんだ、絶対ただで終わらない!」と。だから、まずはチャンピオンズリーグで活躍することで、「上田仁」という存在をもっといろいろなところにアピールしようという気持ちが強くなりました。実際にいろいろな意味で強くなれた気がしますし、ウィーナー・ノイシュタットでプレーできたことや、そこで得た縁にも感謝しています。

 こうした思いがあってか、試合前はワクワク感と緊張が入り交じっていましたが、いざコートに立つと不思議と自信がありましたね。それがプレーにも表れたのかなと思います。
 日本では試合に負けるのが怖くて、勝ったときはうれしいよりも安心感が強かった。しかし、こちらに来てから必要以上に負けを恐れなくなったというか、自分が卓球をやっている意味やドイツで生活していることなども含めて、人生の一部として卓球を受け止めて、深い納得感を得ながらプレーできている気がします。

 デビューが遅くなってしまいましたが、今回、子供たちに初めてプレーする姿を見せることができました。普段のパパではなく、「プレーヤー・上田仁」を見て何か感じてくれる部分があればうれしいと思います。試合後、「お父さんカッコよかったよ!」と息子に言われた時は、親バカかもしれませんが、とても誇らしい気持ちになりましたね(笑)
 勝利後、初のインタビューを受けている際も、子供たちはお構いなしに走り回って僕に抱きついてきたりしました。こういう自由なところは、ヨーロッパのとても良い部分ですね。

 ドイツでのプレーも暮らしもまだまだ始まったばかりで喜んでばかりはいられませんが、デビュー戦でのプレーの出来については自信になります。これからもいろんな意味で成長して、さらに活躍できるよう頑張っていきたいですね。

デビュー戦勝利後の上田ファミリー


上田仁選手への質問を募集しています!X(https://x.com/takurepo/)でハッシュタグ「#教えて上D」を付けて、上田仁選手に教えてほしいこと、聞いてみたいことをポストしてください。 技術的なことやお悩み相談でもOKです。

(写真/文=上田仁 まとめ=卓球レポート編集部)

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