~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。今回は、世界卓球2018ハルムスタッドから見えた日本男子の技術的な課題についてのコメントを紹介しよう。
●もっと日本の強みである「速さ」を生かすプレーを
前回は、世界卓球2018ハルムスタッドでの日本男子の戦いぶりの評価について、チームワークの面からお話ししました。今回は、日本男子の技術的な課題について述べたいと思います。
世界卓球2018ハルムスタッドでは、日本の卓球のよさが少し薄れていました。日本の卓球の強みは、パワーで押し切る卓球ではありません。パワーではなく、チキータなどで前陣から連続攻撃を仕掛けていく「速さ」が、日本が世界に誇る強みです。しかし、今大会ではその強みを生かせないプレーが目立ちました。
その理由としては、プラスチックボールの影響でチキータやフリックが狙われるようになり、その恐怖感から台上からの攻撃を控え、ストップが多くなってしまったことが挙げられます。プレーの速さだけでなく、ラケットさばきの巧みさも日本の持ち味なので、ストップからでもそれなりのラリー展開にはなりますが、ストップからだとどうしてもラリーが遅くなってしまい、日本の強みである速さが生きません。
日本の強みが生かされていないのが顕著だった試合は、第1ステージ(予選リーグ)で敗れたイングランド戦でした。
速いラリーにめっぽう強い相手エースのピッチフォードと対戦した張本智和(JOCエリートアカデミー)と水谷隼(木下グループ)は、台上に来たボールに対してチキータやフリックでいくとピッチフォードに狙われてしまうため、ストップを多めに使いました。ところが、そのストップをピッチフォードにフリックやチキータなどでことごとく狙われ、終始ペースを握れずに敗れました。決勝トーナメント準々決勝・韓国戦の3番で張禹珍に敗れた松平健太(木下グループ)も、台上技術がストップ中心になってラリーが遅く単調になったところを突かれました。
ストップからの展開を磨くことも欠かせませんが、チキータやフリックなどで積極的に仕掛けていく方が、日本の強みである速さが生かせます。
したがって、次に向けては、こちらのチキータやフリックに対する相手のカウンターをさらにカウンターしたり、カウンター気味にブロックしたりするプレーを磨いていく必要があるでしょう。もちろん、速さだけでなく、局面によってはストップでラリーを遅くする戦い方も必要ですし、それによって速さをより生かす戦術も必要です。
今後は、そうした戦術転換も含めて、日本の強みである速さが生きるようプレーをブラッシュアップしていくことをチーム全体で共有し、強化にあたっていきたいと思います。