~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。今回は、全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部を視察した宮﨑強化本部長がバンビの強化について話してくれた。
●指導者の努力と競技人口の増加で、バンビのレベルは右肩上がりで伸びている
前回は、全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部を視察した上での全体的な感想をお話ししました。今回からは、各カテゴリーの技術的な評価について述べていきましょう。
まず、バンビの部(小学2年性以下)の技術的な評価に加え、バンビのカテゴリーの選手たちの強化策についても言及したいと思います。
最近のバンビの部は選手たちの技術レベルの高さに驚かされますが、今大会もその例に漏れず、出場した選手たちは目覚ましいプレーを見せてくれました。
数年前のバンビの部は「サービスをミスせず出すことができれば勝ち上がれる」というレベルでした。ところが、今大会では、ほとんどの選手がサービスをきちんと出せるのはもちろんのこと、そのバリエーションも豊富になっていました。さらに、3球目以降は両ハンドをスムーズに操ってラリーを展開し、中にはロビングを上げてしのぎ、そこから逆襲する選手までいました。
バンビの選手たちのレベルが右肩上がりである理由は、全国各地の指導者の方々の尽力が一番ですが、そのほかでは「小学校低学年から卓球を始める子どもたちの絶対数が増えた」ことも要因の一つでしょう。
数年前までは小学校の低学年から卓球を始める子どもたちが少なかったため、必然と競争も穏やかでした。しかし、近年の卓球人気により、小学校の低学年から卓球を選ぶ子どもたちやその保護者が増加し、競争が激しくなったことが、バンビの部のレベルが向上し続けている一因だと思います。
今大会のバンビの部の試合で、幼い頃から卓球に取り組む子どもたちが増え、そのレベルが着実に上がっていることを目の当たりにし、日本卓球界の強化に携わる身として、うれしさが込み上げました。
バンビの部は小学2年生以下、年齢でいうと8歳以下の小学生たちが出場するカテゴリーです。強化本部では、今大会でバンビの部の一次リーグを1位通過した7歳(小学1年生)の選手を対象に、「アンダー7合宿」を今年の年末に開催することを計画しています。
アンダー7合宿とは、一般財団法人KODAMA国際教育財団が主催し、日本卓球協会が後援する強化合宿です。
この強化合宿は、卓球の最先端の情報やより深い部分を子どもたちに伝えるのはもちろんのこと、生活面や勉学面などにも重きを置き、体だけでなく、心や頭も磨くことを目的にしています。
今大会で一次リーグを1位通過した7歳の選手は、男女合わせて20名ほどでした。会場で対象選手とその保護者にアンダー7合宿への参加を呼びかけたところ、全員が参加を表明してくれました。
8歳の選手ではなく、7歳の選手を合宿の対象にした理由は、二つあります。
まず、8歳の選手は来年になるとカテゴリーがカブ(小学4年生以下)になり、使用する卓球台が変わるからです。バンビの卓球台は、シニアの卓球台よりも10センチ低い台を使いますが、カブからはシニアと同じ高さの台を使用します。そのため、8歳の選手はできるだけ早い段階からシニアの台で練習し、慣れる方が賢明でしょう。
加えて、大きな理由として、8歳の選手を抑えて一次リーグを1位通過した7歳の選手には、相当なポテンシャルがあるだろうと期待できるからです。
将来、アンダー7合宿に参加した選手の中からオリンピックのメダリストが生まれることを期待したいと思います。
(取材=猪瀬健治)