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強化のフロントライン12 カブ女子の評価、張本美和選手の可能性

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~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。今回は、全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部を視察した宮﨑強化本部長が、カブ女子の部に対する評価を話してくれた。


●ずば抜けた力を見せた張本美和選手
フォアに頼りすぎないことが、さらなる飛躍への鍵

 
frontline12-01.jpgダイナミックなフォアハンドで他を圧倒した張本美和(木下グループ)


 前回は、全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部を視察した上でのカブ(小学4年生以下)男子の評価と強化策についてお話ししました。今回は、カブ女子の部にスポットを当てたいと思います。
 カブ女子の部も、前回述べたカブ男子の部同様、全体のレベルが上がっていましたが、その中でも優勝した張本美和選手(木下グループ)の強さが際立っていました。
 張本選手の特筆すべき点は、ダイナミックなプレーを貫いてカブ女子の部を制したことです。

 一般に、筋力が発展途上の小学生の女子は、ドライブに威力を出すことが難しいため、より少ない力で速いボールが打てるスマッシュを攻撃手段の柱にする傾向があります。カブの年代(小学4年生以下)ならば、なおさらこの傾向が強いでしょう。つまり、「小学生の女子選手はドライブではなく、スマッシュを多用した方が勝ちやすい」というのがこれまでの流れでした。過去にもドライブ主戦で才能豊かな小学生の女子選手はたくさんいましたが、彼女たちが安定して勝つようになったのは、もっと学年が上がり、パワーがついてからです。
 ところが、張本選手はカブの年代でありながらダイナミックなドライブで他を圧倒しました。これまでのカブの女子選手の常識を覆すような張本選手のプレーに、大きな可能性を感じました。

 張本選手のよさは、フォアハンドドライブです。バックスイングで力を十分にためてから振り抜くフォアハンドドライブは実にダイナミックで、シニアの選手でもあれほど見事にスイングできる選手はそう多くはいないでしょう。加えて、フォアハンドドライブを打つためのフットワークも速くてスムーズです。
 挙げたように、フットワークを生かしたダイナミックなフォアハンドドライブが張本選手のよさですが、今後、彼女がさらに成長していくためには「フォアハンドに頼りすぎない」ことが鍵になると思います。
 
 改めて述べるまでもなく、現在の世界の女子卓球界は、ラリーのピッチがとても速くなっています。そうした流れの中で、フォアハンド重視のスタイルはウイークポイントをつくる可能性があります。例えば、バック側に来たボールをフォアハンドで回り込んだ場合、フォア側が大きく空いてしまいます。相手のレベルが高くなればなるほど空いたスペースは見逃さないし、スペースが空くことを見越して戦術を立ててくるでしょう。

 張本選手はバックハンドも十分に精度が高いのですが、それ以上にフォアハンドとフットワークが素晴らしいため、今大会ではバック側に来たボールに対して、バックハンドよりもフォアハンドで攻めるケースが目立っていました。
 バック側に回り込むことは決して間違いではなく、要所で必要な技術ですが、「バック側に来たボールはフォアハンドで回り込む」と体が本能的に覚え込んでしまうとスペースが空きやすくなり、さらに上を目指そうとしたときに壁にぶつかる可能性があります。

 このことを踏まえ、張本選手には「バックハンドで決める!」という意識をフォアハンドと同じように持ち、バックハンドをさらに磨いてほしいと思います。先天的ともいえる素晴らしいフォアハンドに、バックハンドの決定力が加われば、張本選手は我々の想像をさらに越える選手へと成長する可能性があります。
 そうして成長を続ければ、兄の張本智和選手(JOCエリートアカデミー)と共に、「兄妹そろって金メダリスト」という偉業も夢ではありません。

(取材=猪瀬健治)

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