~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。今回は、15歳以下の選手を対象に韓国で開催された日韓合同強化合宿の模様について、宮﨑強化本部長が語ってくれた。
●踏み込まない日本と、踏み込む韓国
指導法の違いが明確に表れた
日本卓球協会は、9月に韓国で「15歳以下」と「12歳以下」のトップレベルの選手を対象にした日韓合同強化合宿を行いました。今回は、その合同合宿で感じたことについてお話ししたいと思います。
日本にとって韓国はライバル国の一つです。卓球だけでなく、野球やサッカーなど、さまざまなスポーツにおける日本と韓国との対戦は「日韓戦」と銘打たれ、名勝負を繰り広げてきました。
ライバルとはいうものの、日本と韓国は距離が近い上にさまざまな文化交流も交わされているため、卓球も頻繁に合同合宿を行っているのではないかと思われるかもしれません。しかし、各母体では自主的に合同合宿が行われているものの、日本卓球協会のナショナルチームとして正式に韓国と合同で強化合宿を行うのは、意外にも今回が初めてのことでした。
今年の5月にスウェーデンで行われた世界卓球2018ハルムスタッドでIOC(国際オリンピック委員会)理事の柳承敏さん(アテネ五輪男子シングルス金メダル)と会食した際、「ぜひ、日韓の交流を密にしましょう」と意気投合し、合同合宿を開催する運びとなりました。
合同合宿はソウルから車を少し走らせたところにある韓国のナショナルトレーニングセンターで行いました。この施設は日本における味の素ナショナルトレーニングセンターと同じ位置付けで、卓球だけでなく、あらゆるスポーツの強化施設があります。 韓国ナショナルトレーニングセンターの卓球場は、味の素ナショナルトレーニングセンターの約1.5倍の広さがあり、そこで、松島輝空選手(木下グループ)や谷垣佑真選手(愛工大名電中)、赤江夏星選手(貝塚市立第二中)ら日本の男女カデット、ホープスのトップ選手たちが、同世代の韓国のトップ選手たちと約1週間にわたり、ともに汗を流しました。
今回の合同合宿では、日本と韓国の指導法の違いを強く感じました。
その違いがはっきりと表れていたのが、選手たちが「バックハンドドライブした後、バック側に来たボールを回り込んでフォアハンドドライブ」という練習メニューに取り組んだときです。
日本は、バック側に回り込んだとき、左足(右利きの選手の場合)を踏み込まずにフォアハンドドライブするよう指導するのが一般的です。打球後、素早く戻って空いたフォア側をカバーするためです。
この練習でも、日本選手たちは左足を踏み込まずに回り込んでいましたが、しばらくすると、韓国のコーチが日本選手たちのところに来て身振り手振りを交えて熱心に指導を始めました。よく聞いてみると「回り込んだら左足をしっかり踏み込んで、ボールにできるだけ威力を出す。フォア側にボールが来たらしっかり飛びつく」という内容の指導でした。
実際に韓国の選手たちを見ると、回り込んで左足を大きく踏み込み、パワフルなフォアハンドドライブを打っています。韓国コーチの指導後、日本選手たちも、左足を大きく踏み込んでフォアハンドドライブしようとするのですが、いかんせん、これまでやったことがないので思うようにできません。
この様子を見ていて、同じアジア圏で距離も近く、強豪国として世界に認知されている日本と韓国とで、指導方法にこうも違いがあるのかと非常に興味深いものがありました。
次回も、日韓合同強化合宿について、両国のコーチと選手の関係性の違いの考察などを交えながらお話ししたいと思います。
(取材=猪瀬健治)