1. 卓球レポート Top
  2. インタビュー
  3. 選手インタビュー
  4. 【特別インタビュー】 プロ卓球選手 水谷隼の2020年とこれから(前編)

【特別インタビュー】 プロ卓球選手 水谷隼の2020年とこれから(前編)

 新型コロナウイルスの影響は、時と場所、人を選ばず、ありとあらゆるところに及んでいる。日本卓球界の第一人者である水谷隼(木下グループ)も、その例外ではない。
 この災禍の中、水谷は何を思い、どのように向き合っていこうとしているのか。6月初旬、練習を再開して間もないという水谷に、その胸中を尋ねた。
 水谷が、今とこれからを語ってくれた特別インタビューを、前編と後編の2 回に分けて掲載する。

「焦りはない。僕だけでなく、世界中みんなが同じなので」

 緊急事態宣言が東京など7都府県に発令された翌日の4月8日、味の素ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)が閉鎖された。アスリートの拠点の閉鎖はコロナ禍を象徴するニュースとして大きく報じられ、多くの競技が活動休止に追い込まれた。無論、卓球も例外ではない。
 NTCの閉鎖に伴い、水谷も自宅での自粛生活を余儀なくされた。

--緊急事態が発令されて以降、どのように過ごしていましたか?
 ほとんど家から出てないですね。ラケットも握っていません。特に何もしていなかったです(笑)
 ゲームの大会を主催したり、アプリを使ってライブをしたりして過ごしていました。将来的にやりたいと思っていたことを、この自粛期間をきっかけに始めたという感じですね。

--卓球の練習もできなかったと思います。
 全くしていないですね。一応、ストレッチマットと腹筋ローラーを買ったので、軽くトレーニングはしていましたけど、まあ、気休め程度です(笑)

--自粛中は、卓球ができない焦りはありませんでしたか?
 全然ないですね。どちらかというと、しばらく休みだ、うれしいな、みたいな(笑)
 それは冗談として、練習できないのはみんな同じで自分だけじゃないので、焦りはなかったです。自分だけが練習できない状況だったら焦ったと思いますが、世界共通でみんなが自粛しなければいけない状況だったので、焦りは本当になかったですね。
 これまでずっと試合続きで練習や合宿も多く、「卓球したくてもできない」という状況になったことがありませんでした。なので、卓球のことはあまり考えずにリフレッシュしようと思いました。
 それに、僕はもともと外出が好きなタイプではないので、(自粛生活は)全く苦ではなかったんですよ(笑)

2019年1月の全日本でV10を達成した時の水谷。長らく卓球漬けだった水谷は、自粛生活をリフレッシュ期間と捉えた

 時折ユーモアを交えながら、自身の自粛生活を明かしてくれた水谷。かつてない自粛生活という日常は、長く卓球に明け暮れる毎日を送ってきた水谷にとって、図らずも気分転換になったようだ。
 水谷が再びラケットを握ることができたのは、自粛生活を続けておよそ1カ月半がたった頃だという。

--練習を再開できたのはいつですか?
 緊急事態宣言が解除される少し前です。確か、5月14日だったと思います。速攻で足が筋肉痛になりました(笑) それと、久しぶりに卓球するとラケットがめちゃくちゃ重く感じるんですよね。なので、振るのが辛かった。3日間ぐらいきつかったです。

--どのような点に注意して練習を再開しましたか?
 久しぶりの練習ではけがが怖かったので、最初の2日間はほとんど調整練習です。もう遊びの卓球ですよね、会話しながら軽く汗流す感じで。無理せず、楽しくやりました。
 そこから徐々に上げていって、今(取材日は6月5日)では普通に練習できています。状態はいいですね。

「自分だったらと思うとインターハイ中止のショックは計り知れない。
しかし、次に向けてやるしかない」

 緊急事態宣言が解除され、多くの選手が練習を再開したり、あるいは再開しようしているところだろう。これから練習を再開するという選手は、初めは軽く汗を流す程度でけがのリスクを減らしたという水谷のコメントが参考になるだろう。
 練習が再開できるようになってきたとはいえ、レベルを問わず、ほとんどの大会は中止や延期を余儀なくされているのが現状だ。

--市民レベルのローカル大会から主要な全国大会まで、軒並み大会が中止になっています。
 本当に残念としか言えないです。中学生だったら全中(全国中学校卓球大会)、高校生だったらインターハイ(全国高等学校卓球選手権大会)が大きな目標ですから。
 僕自身、高校1年生の時にインターハイで優勝したいという気持ちが強かったし、実際に優勝できたのは高校3年生の時でしたが、仮にその高校3年生のチャンスの時に大会がなくなっていたら、そのショックは計り知れないと思います。
 ただし、インターハイが全てではありません。下を向いて落ち込んでいても中止になった大会が開かれることになるわけではない。中学生だったら次はインターハイ、高校生だったら次は大学生の大会、あるいは全日本(全日本卓球選手権大会)など、大会はそれこそ無限にあります。つらいことではありますが、今は気持ちを切り替えて次に向けてやるしかない。そう思います。

 自粛期間中の思いや練習再開の様子、活躍の場を断たれた選手たちへのエールを語ってくれた水谷。
 後編では、東京オリンピック延期やコロナ禍への向き合い方についての水谷の思いを紹介する。
(文中敬称略)

(取材/まとめ=猪瀬健治)

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■インタビューの人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■インタビューの新着記事