世界一を決する舞台、世界卓球。そこは、現代卓球の最先端を映す鏡だ。今、世界で勝つ選手はどのような技術や戦術を使うのか。その答えに、第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で行った現地取材と試合映像から迫る特別企画をお届けする。
初回は、ツッツキにスポットを当てる。
今大会の先手争いで多く使われていたツッツキのメリット
ラリーの早い段階で主導権を掌握できるかどうかは、得点に大きく関わる。とりわけ、強力な両ハンドを標準装備しているトップ選手同士の試合では、この先手争いに全てがかかっているといっても過言ではない。そのため、技術や戦術の世界的なトレンドを探る上では、「トップ選手たちはどう先手を取るのか」に注目することが欠かせないポイントになる。
このポイントを踏まえて、今大会で活躍した選手たちの先手争いに注目してみると、目立っていた技術が、ツッツキだ。
ボールに下回転をかけるツッツキは、チキータ(台上のボールをバックハンドドライブする技術)やフリック(台上のボールを払うように打つ技術)に比べると得点力こそ低いが、以下のようなメリットがある。
ツッツキのメリット
・安定性に優れている
・(ツッツキが深ければ)相手がドライブで持ち上げてきやすい
・(ツッツキが深ければ)相手の体勢を詰まらせやすい
・(ツッツキが深ければ)相手を遠くから打たせることができるので時間の余裕ができる
今大会で活躍した選手たちは、これらのツッツキのメリットを生かして、カウンタードライブの起点にしたり、相手の体勢を崩したりしてラリーの主導権を握るプレーを多く使っていた。
ツッツキが使われるようになった背景
攻撃的かつ高速化が進む現代卓球では、守備的なツッツキは先手争いにおいてあまり重視されてこなかった技術だが、近年、用いられるようになった背景には、「チキータ」と「カウンター技術の向上」の2つが挙げられるだろう。
今はほとんどのトップ選手が強烈なチキータを身に付けているので、台上にボールを送った後は、まずチキータに(スピードの速いボールに)備えることが必須だ。そこへチキータしにくいツッツキを送ることで、結果的に相手の裏をかく形になりやすい。
また、用具や打法の進歩で、ドライブに対するカウンタードライブの成功率が飛躍的に高まった。これにより、台からワンバウンドで出てきて攻撃できそうなボールに対してもあえてツッツキを選択し、自分から安易にドライブをかけるのではなく、相手にドライブをかけさせて優位に立つプレーが随所で行われていた。
相手コート深く狙うツッツキ、名付けて「ディープツッツキ」
今大会で活躍した選手たちはツッツキを有効に使っていたが、打球スピードが遅いツッツキはバウンドが少しでも浅かったり、打球の軌道が少しでもが高かったりすると相手に強打されやすい。そのため、先手を取るようなツッツキを送るには、相手コートのエンドライン際に深く低くコントロールするツッツキ、名付けて「ディープツッツキ」が必須になる。
ディープツッツキを生かした得点シーンを、世界卓球2024釜山で撮影した試合映像から紹介する。ツッツキのスイングやその後の戻り、ツッツキからの連係パターンなど一連の動きに注目して、自身のレベルアップに役立ててほしい。
↓動画はこちら
(取材/まとめ=卓球レポート)