トップ選手はみな威力のあるサービスを出しますが、実際のところ、トップ選手の中でも特にサービスがすごい選手は誰なのでしょうか。
トップ選手と真剣勝負をする機会がない我々はあれこれ想像することしかできませんが、この疑問に水谷隼選手(木下グループ)が答えてくれました。
この特別企画では、卓球レポートのリニューアルを記念して、水谷選手が選ぶ世界のベストサーバーをランキング形式でお届けしていきます。
日本のエースとして世界の強豪と渡り合ってきた水谷選手が選ぶ、サービスがすごい選手とその理由とは?
今回は、第3位の選手を紹介しましょう。
水谷隼が選ぶ世界のベストサーバー
第3位 ボル(ドイツ)
ボルの回転量が多いYGサービスは世界一の精度
僕がこれまで対戦した中で、サービスがうまい、取りにくいと感じた選手の第3位はボル(ドイツ)です。
ボルのサービスはサイドスピン(横回転系)が主体で、回転がめちゃくちゃかかっているのが特徴です。そのため、僕がストップしようとしても、ボールがどうしてもワンバウンドで台から出てしまいます。そうなると、ボルに回転量の多いループドライブで攻められ、彼の得意な展開になってしまいます。
ボルのサービスの中では、特にYGサービス(逆横回転サービス)が分かりにくいですね。YGサービスを使う男子のトップ選手は多いですが、その中でもボルは世界で1番YGサービスがうまいと思います。
トスが低いのでコースが分かりにくい
ボルのサービスはトスが低いのが特徴で、このことがレシーブのやりにくさにつながっています。
サービスのトスが高いとこちらに時間の余裕ができるので、相手の体の動きや打球の瞬間からサービスがどこに来るのか見当をつけることができます。
しかし、ボルのトスは低いので、こちらに時間の余裕がありません。そのため、バックに来るのか、それともフォアなのかミドルなのか、コースがとても分かりにくいところが、ボルのサービスの取りにくいところです。
コースが読みにくいことに加えて、厳しいコースを正確に突くコントロールの良さも、ボルのサービスの特徴です。
"横上回転"の回転量がすさまじい
ボルのサービスは、変化の分かりにくさよりも回転量の多さが厄介です。特に、回転がすごくかかっているのが「横上回転」です。
ボルの左右の横上回転サービスは、回転がめちゃくちゃかかっている上に軌道が低いので、レシーブから強打できません。ストップも難しいので、軽くフリックする(払う)くらいしかレシーブの手がないのですが、そうするとボルに両ハンドドライブで連打されてしまいます。
まとめ
水谷選手がこれまで対戦した中で、サービスがうまい選手の3位に選んだのは、ドイツの皇帝・ボルでした。ボルといえば強烈な回転のループドライブがフォーカスされがちですが、そのループドライブはサービスの威力があってこそ引き出せるのでしょう。
低いトスによるコースの読みにくさなどは、ボルと対戦し、苦しめられた水谷選手だからこそ分かるポイントであり、サービスの威力をもっと高めたいと願う多くの選手にとってヒントになると思います。
次回は、水谷選手が選ぶ世界のベストサーバーの第2位を発表します。お楽しみに!
ボルのYGサービス
(取材/文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘 動画=小松賢)