安定性が極めて高い前陣カウンタープレーで世界ランキングを駆け上がっている中国期待のサウスポー・林高遠(リン ガオイェン)。
この特別企画では、林高遠の技術を、中国ナショナルチームの合宿所で撮影した連続写真で紹介する。
第5回は、ミドルに来たボールに対してバックハンドでサイドスピンをかけながらカウンタードライブするテクニックを取り上げよう。
フォアハンドとバックハンドのどちらで打球するべきか迷うミドル(左利きの林高遠にとって左腰あたり)は、相手に狙われることが多いコースだ。したがって、ミドルに来たボールへの対応を磨くことは、勝つために必須になる。
ミドルは、ストライクゾーンが広い上に打球に威力を出せるフォアハンドでの対応がセオリーとされているが、林高遠はフォアハンドではなく、バックハンドで対応することが多い。バックハンドは、フォアハンドに比べて威力という点で劣るものの、「早い打球点を捉えやすい」というメリットがある。
ミドルに来たボールに対し、少しサイドスピン(横回転)をかけながらカウンター気味に放つバックハンドドライブは、林高遠の得意プレーの一つであり、彼のプレーの速さを象徴するテクニックだ。
ポイント①
厳しいコースへの速い横回転ロングサービスで
相手のレシーブのコースを限定させる
林高遠がミドルに来たボールに対してサイドスピンを入れたバックハンドカウンタードライブを使うケースは、3球目が多い。この3球目を行うために林高遠が使うサービスが、右利きの相手のフォア側への横回転ロングサービスだ(写真A-1~5)。
このサービスはボールの少し横を打つため、右利きの相手のフォア側へ曲がるような軌道を描く。加えて、スピードが速いため、相手は林高遠のバック側へ引っ張るようにレシーブすることが難しく、センターラインあたりに返してくることが多くなる。
林高遠は、この横回転ロングサービスで相手のレシーブのコースを限定しつつ、相手のバック側を大きく空けることによって、ミドルからのサイドスピンを入れたバックハンドカウンタードライブの成功率と効果を高めている。
林高遠のロングサービスでは、右足(右利きの選手の場合は左足)を着地させながら打球している点が参考になる(写真A-2~3)。このように足を着地させる勢いを使うとスイングが力強くなり、サービスにスピードを加えやすい。次への戻りを優先したコンパクトなフォロースルー(打球後のラケットの動き)も参考にしよう(写真A-4~5)。
ポイント②
左足をフォア側へ運び
ひじを体から大きめに離して準備
ロングサービスを出した後、ミドルに来たドライブに対して、バックハンドで打球すると判断したら、左足(右利きの選手は右足)をフォア側に動かし(B-1~3)、わきを大きく空けてひじを体から大きめに離して準備することがポイントだ(C-1~3)。このように準備することにより、ミドルに来たボールを体の正面あたりで捉えられるため、正確に打球しやすくなる。
このとき、ラケットの先を体の方に向けるように手首をしっかりひねっておくこともポイントだ。
ポイント③
ボールの少し左を打ち、
打球に角度をつける
左足をフォア側に運び、ひじを体から大きめに離して準備したらバックハンドドライブするが、このときに重要なのは、「ボールの少し左(右利きの選手はボールの少し右)を捉える」ことだ。そうすることによって、右利きの相手のバック側に厳しく角度のついたボールを送ることができる。
林高遠はこのテクニックで右利きの相手のバック側を厳しく詰めたり、左利きの相手をフォア側に大きく動かしたりして主導権を握るパターンを得意とする。
ボールの正面より少し左を捉えるためには、準備でひねった手首の返しを抑え気味にし、打球面が(右利きの相手の)バック側を向いているときに打球している林高遠のスイングを参考にしてほしい(写真D-2)。
ポイント④
右足を後ろへ小さく引く動作で
コントロールを高める
このテクニックを成功させるためには、林高遠の足の動きにも注目だ。林高遠は右足(右利きの選手は左足)を小さく後ろへ引きながらスイングしているが(写真E-1~3)、このように足を引くと、上体が自然と右を向いて手首の返りすぎを防げるため、打球を(右利きの相手の)バック側の厳しいコースへコントールしやすくなる。
右足を後ろへ引きながらも、上体の前傾をしっかりキープしているところを参考にしよう。
(解説=猪瀬健治 取材/写真=岡本啓史 取材/動画=小松賢)