安定性が極めて高い前陣カウンタープレーで世界ランキングを駆け上がっている中国期待のサウスポー・林高遠(リン ガオイェン)。
この特別企画では、林高遠の技術を、中国ナショナルチームの合宿所で撮影した連続写真で紹介する。
最終回は、フォアハンドドライブを取り上げよう。
これまで紹介してきた速さ重視の多彩なバックハンドテクニックで相手を追い詰めた後、林高遠が繰り出すのがフォアハンドドライブだ。
林高遠のフォアハンドドライブはボールのやや外側を捉えるため、右利きの相手のバック側に少し曲がりながら飛んでいく。
このカーブするフォアハンドドライブは、林高遠の高速プレーを締めくくる大きな武器だ。
ポイント①
腰を大きめにひねりながら
左足に重心をかけてバックスイング
まず、バックスイングから見ていこう。
林高遠は右足前のスタンス(足の構え)をつくった後(写真A-3)、腰を左にひねりながら左ひざを曲げ、左足に重心を十分にかけて準備している(写真A-4)。
フォアハンドドライブの基本通りのバックスイングだが、このように準備すると、重心移動と腰の回転を使って力強くスイングすることができる。右利きの選手の場合は、左足前のスタンスをつくり、腰を右にひねりながら右足に重心をかけて準備しよう。
フリーハンド(右腕。右利きの選手は左腕)のひじを90度程度に曲げて胸の前あたりに置き、体のバランスを保っているところも参考にしてほしい。
ポイント②
左足で床を強く蹴る勢いで
力強くスイングする
続いて、スイングを見ていきたい。
林高遠は腰を左にひねり、左足に重心をかけて準備したら、左足から右足への重心移動とひねった腰をもとに戻す勢いで斜め上にスイングし、フォアハンドドライブしている(写真B-1~3)。
特に、左足に注目してほしい。林高遠の打球後の左足を見ると、かかとが床から浮いているが(写真B-3)、これは左足で床をしっかり蹴っているためだ。このように、かかとが浮くくらい左足で床を強く蹴ると、重心が右足の方へスムーズに移動し、その勢いで体(腰)がしっかり回転する。そのため、林高遠はスムーズに力強くスイングすることができている。
ポイント③
ボールの少し左を打ち、
打球に角度をつける
中国卓球では、打球の弧線や回転量の多さを重んじる。そのため、総じて中国選手たちのフォアハンドドライブは、ボールの少し外側を強くこするので、打球がカーブする特徴がある。
林高遠のフォアハンドドライブもこの例に漏れず、ボールの正面ではなく、少し外側を捉えているのが特徴だ(写真C-2)。林高遠は、このカーブがかかったフォアハンドドライブで相手の手が届かない厳しいコースを突き、得点するのを得意とする。
林高遠のようにボールの少し外側を捉えるためには、「体よりも前でボールを捉える」ことを意識しよう。そうすると、ラケットの打球面がやや閉じたあたりでボールを捉えられるので、自然とボールの少し外側を捉えやすくなる。
ポイント④
手首をしっかり使い
打球に強く回転をかける
林高遠のスイングで特徴的なのが、手首の使い方だ。
写真D-2、E-2のフォロースルー(打球後のラケットの動き)を見ると分かる通り、林高遠はラケットの先が後ろを向くくらい手首をしっかり使ってスイングしている。このように手首を使ってスイングすると、ボールをしっかりこすることができるため、打球の回転量が増す。
こうしたフォロースルーは張継科や周雨などほかの中国選手にも共通して見られるが、この手首を利かせてボールを強くこすり上げるスイングが、林高遠のフォアハンドドライブの球威を高めている。
ただし、手首を使うとはいえ、手首だけを動かそうとしても球威は高まらない。先に述べた足の蹴りや腰の回転など、体全体を使ってスイングした上で、スイング中に手首を利かせよう。
(解説=猪瀬健治 取材/写真=岡本啓史 取材/動画=小松賢)