卓球レポートリニューアル特別企画として水谷隼選手(木下グループ)が選ぶ世界のベストサーバーをランキング形式でお届けしてきました。水谷選手がサービスの名手として選んだ選手の3位はボル(ドイツ)、2位はオフチャロフ(ドイツ)、そして1位が馬龍(中国)でした。
水谷選手が挙げた選手たちはもちろんですが、水谷選手自身も彼らにひけを取らないサービスの名手です。
前回は、特別企画の番外編として水谷選手が近年力を入れているサービスの一つ、縦回転系サービスを紹介してくれました。番外編のラストは、YGサービスの狙いとコツを明かしてくれます。
水谷隼のYGサービス
YGサービスとは、フォアハンドで手首を使って逆横回転をかけるサービスです。今回の全日本卓球選手権大会でも、水谷選手がYGサービスからラリーの主導権を握るシーンを多く目にしました。ここでは、水谷選手のYGサービスのメインである逆横下回転サービスを出す狙いとポイントについて話してくれました。
回転量にこだわることが
YGサービスの効果を高める決め手
YGサービス(写真A-1~8、B-1~8)は、今でも出す選手が少ないサービスなので、相手が取り慣れていないことが大きなメリットです。出す選手が少ない分、受ける機会も少ないので、YGサービスを完璧にレシーブできる選手はほとんどいません。
このメリットを踏まえ、僕がYGサービスを出すときに最も心掛けていることは、「回転量を多くする」ことです。回転量が多いほど、相手がうまくレシーブできなくなる確率が高くなるので、チャンスが巡ってきます。
逆横下回転を強くかけるためには、ラケットを下から上に速く引き上げるように動かし、ボールをこすり上げるイメージで打球することがポイントです。
投げ上げYGサービスは
効果が高い半面、難度も高い
YGサービスは基本的にトスを高く上げませんが、最近ではトスを高く投げ上げてから出す「投げ上げYGサービス」(写真C-1~8、D-1~8)を練習しています。
僕は、トスを高く投げ上げてからの横回転系サービスを多く使うので、そのときにYGサービスを混ぜれば効果的だと考え、取り組んでいます。
ただし、投げ上げYGサービスは効果が見込める半面、僕がこれまでいろいろなサービスを身に付けてきた中でも一番コントロールが難しいサービスです。そのため、試合の重要な局面では、まだ自信を持って出すことができません。今のところ、投げ上げYGサービスは試合のあまり重要ではない場面で使っていますが、まだ相手にうまくレシーブされたことはありません。
まとめ
数年前の水谷選手はYGサービスを出すイメージがありませんでしたが、V10を達成した今回の全日本卓球選手権大会ではYGサービスを積極的に使い、成果を上げていました。さらに、水谷選手はトスを高く投げ上げてから出すYGサービスにも取り組んでいるといいます。こうした、現状にとどまらずに常に次を目指すマインドと実行力が、水谷選手の全日本V10という途方もない記録につながったのでしょう。
水谷選手をして「この世で一番難しいサービス」と言わしめる、投げ上げYGサービス。マスターできれば水谷選手に大きく近づけるかも!?
下に掲載している連続写真を参考にして、ぜひチャレンジしてみてください。
水谷隼の基本のYGサービス
後ろから撮影した連続写真では、水谷がラケットをどう動かしているかがよく分かる。ラケットをわきの下に巻き込むようにバックスイングした後(写真B-4~5)、ラケットを体から遠ざけるように動かしているスイングを参考にしよう(写真B-6~8)
水谷隼の投げ上げYGサービス
(取材/文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘 動画=小松賢)