卓球レポートリニューアル特別企画として水谷隼選手(木下グループ)が選ぶ世界のベストサーバーをランキング形式でお届けしてきましたが、いかがでしたか。
水谷選手がベストサーバーサーとして挙げた馬龍(中国)、オフチャロフ(ドイツ)、ボル(ドイツ)はもちろんですが、水谷選手自身も彼らに負けずとも劣らないサービスの名手です。
そこで、今回から2回にわたり、特別企画の番外編として水谷選手が近年、力を入れているサービステクニックを紹介していきます。
今回は、水谷選手の縦回転系サービスにスポットを当てましょう。
水谷隼の縦回転系サービス
近年の水谷選手は、チキータを防いだり、チキータの威力を弱めたりする目的で、下回転を強くかけたサービスと、下回転をほとんどかけないナックル性サービスを多めに使います。
男子シングルスでV10を達成した今回の全日本卓球選手権大会でも、水谷選手のシンプルな縦回転系サービスは大きな得点源になっていました。
「ナックル性サービスをいかに下回転サービスに見せるか」が重要
縦回転系サービスの効果を高めるためには、「ナックル性サービスを、いかに下回転サービスのように見せるか」が重要になります。
ナックル性サービス自体は簡単なサービスですが、質の高いナックル性サービスを出すことができれば、下回転サービスの効果も大きくなり、双方のサービスの相乗効果も生まれます。そのため、ナックル性サービスの精度や(相手が下回転サービスと見間違えるような)分かりにくさには、すごくこだわっています。
ナックル性サービスを下回転サービスに見せるポイントは「軌道」
相手が下回転サービスと見間違えるようなナックル性サービスを出すためには、スイングや打球点などを下回転サービスと同じように行うことに加え、僕が特にこだわっているのは「ボールの軌道」です。
相手(レシーバー)は、こちらのモーションや打球の瞬間もそうですが、ボールが飛んでくる様子でサービスの変化を判断することが多いと思います。そこで、ナックル性サービスを出すときは、相手に飛び方でばれないよう、下回転サービスとできるだけ同じ軌道にすることを心掛けています。
具体的には、下回転が強くかかっているサービスは台の上を滑るようにスーッと飛んで行くので、ナックル性サービスもスーッと飛んで行くように出します。ボールを強くはじくのではなく、軽くはじくイメージでナックル性サービスを出すと、スーッと飛んで行くような軌道にしやすいと思います。
下回転サービスは、ラケットの先端の方でこすることがコツ
一方、下回転サービスのポイントは、ラケットの先端の方でボールをこすることです。そうすると、ボールに下回転を強くかけやすくなります。
また、下回転を強くかけたサービスは出す場合は、クロス(左利きの水谷にとって、右利きの相手のフォア前)の方がコントロールしやすいです。
自分のイメージ通りに正確に出すことが大切
回転の種類にかかわらず、サービスを出すときは、出す前にコースやスピード、回転などをある程度イメージすると思います。
そのイメージに沿って正確に出せるようになることが、サービスでは最も大切だと思います。
水谷隼の下回転サービスとナックル性サービス
(取材/文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘 動画=小松賢)