今回の達人 浜本由惟（木下グループ）
勝つためのテクニックを達人がレクチャーする「究める」シリーズ。今回は、シリーズ初となる女子選手の登場だ。美貌と確かなテクニックで人気を集める浜本由惟選手が、チキータを究めるためのポイントを伝授する。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーを想定しています
チキータとは、台上の短いボールに対してバックハンドドライブする技術だ。男子ではすでに必須の技術だが、女子の間でもチキータを取り入れる選手が急速に増え始めている。
今回は、ミドル（センターライン付近）前に来た横下回転サービスに対してチキータするときを例に挙げて、浜本選手がポイントを解説してくれる。女子トップクラスのチキータの精度を誇る浜本選手が話すポイントは、女子選手はもちろんのこと、男子選手にとっても大いに参考になるだろう。
達人からのアドバイス
レシーバーはサーバーに比べて不利な展開になりがちですが、チキータを取り入れることで攻撃的にレシーブすることができ、自分の展開に持ち込みやすくなります。チキータは、ボール自体が攻撃的であることに加えて、ツッツキやフリックよりもコースを読まれにくいので、チキータを使うことでプレーが攻撃的になると思います。
チキータは、マスターできればとても有効なので、女性の皆さんにもぜひ挑戦してほしい技術です。
チキータを成功させるためのポイントは、まず「体をボールに近づける」ことです。体をボールに近づけると、ラケットをスムーズに操作できる上に、ボールもよく見極められるので、チキータの成功率が高まります。
このケースで体をボールに近づけるときは、レシーブを構えた位置から右足をミドル前（斜め前）に踏み込むことが基本になりますが、このとき、右足だけでなく、上半身もボールに近づけることを心掛けてください。せっかく右足を踏み込んでも、上半身が起き上がってボールから離れてしまうと、思うようにスイングできません。
チキータを成功させるためには、右足を踏み込むことに加え、上体の前傾を深めることも意識して、体をボールに近づけましょう。
達人からのアドバイス
続いて、バックスイングのポイントについてお話しします。
チキータするときは、ひじを前に突き出すように体から大きく離し、手首をひねってバックスイングを取ります。
「ひじを肩と同じくらいの高さに上げる」「ラケットの先を自分の方へ向けるように手首をしっかりひねる」の2つがポイントです。このポイントを意識してバックスイングすると、体の前にスイングするための空間ができるので、台上に来た短いボールをバックハンドドライブしやすくなります。
体をボールに近づけると同時に、説明したポイントを踏まえてバックスイングし、チキータの準備をしてください。
達人からのアドバイス
ボールに近づきながらひじを体から大きく離し、手首をひねって準備したら、ひねった手首を返しながら斜め上にスイングし、ボールの正面より少し左上をこすり上げるように打ちます。ひじを動かしすぎないように注意し、打球する瞬間に手首を鋭く返してボールを強くこすり上げてください。「当たる一瞬に回転をかける」という感覚です。
打球点は、ボールがバウンドの頂点から少し落ちたあたりを狙うと、ボールをこすり上げるように打ちやすくなります。
私がチキータを身に付ける上でコーチから受けた指導で印象的なのは、「ラケットをしっかり振り切る」というアドバイスです。
ラケットをしっかり振り切るようにスイングすることで、チキータのスピードや回転量がアップするとともに、成功率も高まり、次への戻りもスムーズにできるようになりました。チキータするときにスイングが中途半端になってしまうと、ボールを思うようにこすることができないので、サービスの回転の影響を受けてミスしやすくなる上に、スピードや回転量も高まりません。
チキータの成功率と質を高めるためには、ラケットをしっかり振り切ることを意識してみてください。
（取材／文＝猪瀬健治 写真＝岡本啓史 動画＝小松賢）
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