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予測不能!世界を翻弄する林昀儒のサービス
第3回 読みを惑わせる「二段式バックスイング」

 飛躍的な成長で世界を驚かせている中華台北の若きエース・林昀儒(リン ユンジュ)。
 この特別企画では、林昀儒の大きな武器であるサービスのメカニズムについて、本人のコメントを交えながら迫っていく。
 前回は、林昀儒が試合で主に使うサービスは、「横下回転ショートサービス」「横回転ショートサービス」「横下回転ロングサービス」「ナックル性ロングサービス」の4つであることを紹介した。今回から、この4つの横回転系サービスがなぜあれほど効くのか、その理由に迫ってみたい。
 今回は、バックスイングにフォーカスを当てよう。

横回転系サービスのバックスイング

高めのトスで時間の余裕をつくる

 林昀儒が横回転系サービスを出す時は、右足前(右利きの選手は左足前)のスタンス(足の構え)をつくり、台のエンドラインに対して半身の体勢で構える。フォアハンドでサービスを出すときのオーソドックスな構えだ。
「サービスを出す時は全身を使ってバランスを取りながらバックスイングします。トスは、真っすぐ投げ上げるように意識しています」と、バックスイングで心掛けているポイントを林昀儒は語る。腕だけでトスするのではなく、上体を起こす勢いを使ってボールをきれいに真っすぐ投げ上げている点を参考にしてほしい。

 また、特に着目してほしいのが「トスの高さ」だ。
 林昀儒は、横回転系サービスを出す時にトスをかなり高めに上げるが、そうすると時間の余裕が生まれる。この時間の余裕が、次から紹介する独特なバックスイングのポイントになっている。

バックスイングを2回取り、腕をリラックスさせる

 続いて、林昀儒の横下回転ショートサービス(連続写真A-1~10)と横下回転ロングサービス(連続写真B-1~10)を例に挙げて、バックスイングでのラケットの動きを見ていこう。独特な動きなので、よく注目してほしい。
 トスを高めに上げた林昀儒は、ラケットを後ろへ引いてバックスイングを取っている(写真A-4、B-4)。普通であれば、ここからスイングに切り替わるところだが、林昀儒はラケットをいったん前方向へ動かすと(写真A-5~8、B-5~8)、再びラケットを後ろへ引いてバックスイングを取っている(写真A-9~10、B-9~10)。
 ラケットを2回引く独特のバックスイングだが、この主な狙いは「腕をリラックスさせる」ことだ。このように、ラケットの動きを止めずにおくことで、腕から余計な力が抜けて腕全体がリラックスするため、ラケットを自在に動かしやすくなり、スイングを加速させやすくなる。
 林昀儒は、この二段式ともいえるリラックスしたバックスイングによって、変化が分かりにくくてよく切れたショートサービスを出したかと思えば、突然、スピードが速いロングサービスを出すことができるのだ。
 先に触れたトスを高めに上げることによって、この二段式バックスイングが可能となっている。

二段式バックスイングがレシーバーの読みを惑わせる

 林昀儒の二段式バックスイングは、サービスの回転量やスピードを高めることに加え、「相手にサービスをカムフラージュする」効果が大きい。
 写真A、Bは横下回転ショートサービスと横下回転ロングサービス、それぞれのバックスイング完了時をレシーバー側から見た写真だが、ラケットやフリーハンド(右腕)の角度が若干異なる以外は形がほとんど同じなのが分かるだろう。
 特に注目すべきは、横下回転ロングサービスのバックスイング(写真B)。一般に、ロングサービスを出す時はより強い力で打球しようとバックスイングが大きくなりやすいものだが、林昀儒のバックスイングは横下回転ショートサービスとほとんど変わらない。レシーバーからすると、このバックスイングからあの鋭いロングサービスが来るとは想像することが難しいだろう。
 しかし、林昀儒は先述した二段式バックスイングで腕をリラックスさせておくことにより、スイングを急加速できるため、ショートサービスとほとんど同じ体勢から鋭いロングサービスを繰り出すことができる。一方、レシーバーからすると、林昀儒のバックスイングからはロングサービスの気配が感じられないので慌ててしまう。そして、いったんロングサービスに面食らうと、今度はショートサービスに対しても判断が遅れてしまうのだ。
 実際の試合で林昀儒のサービスを受けるレシーバーは、彼のロングサービスに驚くのはもちろんだが、ショートサービスへの対処の遅れも目立つ。その背景にあるのが、今回取り上げた二段式バックスイングだ。


(取材/まとめ=卓球レポート編集部)

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