飛躍的な成長で世界を驚かせている中華台北の若きエース・林昀儒(リン ユンジュ)。
この特別企画では、林昀儒の大きな武器であるサービスのメカニズムについて、本人のコメントを交えながら迫ってきた。
最終回は、林昀儒がこれまで紹介してくれたサービスからの3球目のパターンを紹介しよう。
横下回転ショートサービスと横回転ショートサービスからの3球目
横下回転のときはストップ、ツッツキ
横回転のときは長いレシーブを待つ
まず、横下回転ショートサービスを出した後の3球目から紹介しよう。このサービスからの3球目の待ち方について、林昀儒は次のように語る。
「回転がかかった横下回転ショートサービスをきちんと出せた場合は、相手はフリックやチキータができないので、ストップかツッツキでレシーブしてくる可能性が高くなります。
ストップでレシーブしてきた場合には、こちらは(チキータやフリック、ダブルストップなどで)どのようにでも対処できます。
一方、ツッツキでレシーブしてきた場合は、ツッツキの質によって対応を変えます。
ツッツキの軌道が低いときは、力強いボールは打てないので、ループドライブ(回転量の多いドライブ)で対応します。ツッツキが高かった場合は一撃で決めにいきます」
上の写真A-1~10は、横下回転ショートサービスを出した後、バック側に来た低い軌道のツッツキに対してバックハンドでループドライブしている連続写真だ。ツッツキに目線を合わせるように姿勢を低くしてバックハンドドライブしているところを参考にしてほしい(写真A-7~10)。
次に、横下回転ショートサービスとならび、林昀儒がショートサービスの柱にしている横回転ショートサービスからの3球目のパターンを紹介しよう。
「このサービスは相手のレシーブの選択肢が増えるので少しリスキーです」と林昀儒が語るように、横回転ショートサービスは下回転が加わっていないため、ストップやツッツキよりも、チキータやフリックなど攻撃的なレシーブを想定することがセオリーになる。
上の写真B-1~10は、横回転ショートサービスを出した後、バック側に来たチキータに対してバックハンドドライブで3球目攻撃している連続写真だ。ツッツキに対するときよりも姿勢を高くし、チキータに合わせるように前方向へコンパクトにスイングしている点が参考になる(写真B-7~10)。
また、横回転ショートサービスを出す際は、「前提として、横下回転ショートサービスに対してストップやツッツキを多用してくる相手に出します」という林昀儒のコメントも参考にしてほしい。
横下回転ロングサービスからの3球目
バック側3分の2でドライブを待つ
最後は、横下回転ロングサービスからの3球目を紹介しよう。
「横下回転ロングサービスは相手が僕のフォア側には返しにくい回転がかかっているので、クロス(右利きの相手のフォア側)にこのサービスを出したら、こちらのバック側3分の2の範囲に(ドライブで)レシーブが来ることを予測します。この傾向は、相手が左利きの選手の場合でも同じです」と、林昀儒。
上の写真1~10は、横下回転ロングサービスをクロスに出した後、相手がバック側につないできたドライブに対して、バックハンドでカウンタードライブしている連続写真だ。ロングサービスを出した後のセオリー通り、サービスを出した後、相手のスピードのあるレシーブ(ドライブ)に備えて台から距離を取っているところを参考にしてほしい(写真5~7)。このほか、横下回転ロングサービスからは、バックハンドだけでなく、回り込んでフォアハンドでカウンタードライブするパターンも林昀儒は得意とする。
また、林昀儒がロングサービスのもう一つの柱として挙げてくれたナックル性ロングサービスをクロスに出した場合も、バック側3分の2にレシーブが来ることを予測することがセオリーになる。
これまで本企画で述べてきたサービスそのものの変化やコースの分かりにくさに加え、今回紹介したように3球目のパターンがしっかり確立されていることが、林昀儒のサービスが世界の強豪たちを翻弄する大きな理由だ。
さて、6回にわたって林昀儒のサービスのすごさに迫ってきたが、いかがだったろうか。サービスはタッチ(感覚)の要素が多くを占めるため、林昀儒が明かしてくれたポイントをそのまま共有することは難しいと思うが、その一端に触れていただくことはできたと思う。
ぜひ、この特集を繰り返し見て、林昀儒のサービスを細かくなぞりながら、自身のサービス向上に役立ててほしい。
(取材/まとめ=卓球レポート編集部)