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予測不能!世界を翻弄する林昀儒のサービス
第5回 ロングサービスが効く理由

 飛躍的な成長で世界を驚かせている中華台北の若きエース・林昀儒(リン ユンジュ)。
 この特別企画では、林昀儒の大きな武器であるサービスのメカニズムについて、本人のコメントを交えながら迫っていく。
 今回は、「横下回転ロングサービス」「ナックル性ロングサービス」という、林昀儒がよく使う二つのロングサービスのスイングの要点を紹介しつつ、林昀儒のサービスのハイライトともいえるロングサービスが効く理由について、本人のコメントを交えながら迫っていきたい。

横下回転ロングサービスとナックル性ロングサービスのスイング

スピード重視でインパクトを強くする

 林昀儒のロングサービスが効く理由に迫る前に、林昀儒がロングサービスの柱として使う横下回転ロングサービスとナックル(無回転)性ロングサービスのスイングの要領から見ていきたい。

 横下回転ロングサービスから見ていこう(写真A-1~6)。林昀儒はラケットの打球面を上に向けたバックスイングから(写真A-3)、姿勢を低くしながらボールの横下を打球(写真A-4)。打球後は、フォロースルー(打球後のラケットの動き)をコンパクトに抑えている(写真A-6)。

 一方、ナックル性ロングサービスは(写真B-1~6)、バックスイングやフォロースルーは横下回転ロングサービスとほとんど同じだが、ボールの真横あたりを打球しているところがポイントだ。

「僕がロングサービスを出すときは、回転の種類にかかわらず、『スピード』を重視しています。そのため、ショートサービスを出すときよりも、インパクトの力を強くします。
 また、第1バウンドは自分のコートのエンドラインあたりを狙うことも、ロングサービスを出す時のポイントです」という林昀儒のコメントを参考にしてほしい。

体の向きをそろえて
相手にコースを予測させない

 ここからは、林昀儒のロングサービスが効く理由に迫っていこう。

 この特別企画の第3回で紹介した二段式バックスイングによって、ロングサービスを出す時でも、ショートサービスと同じような形でバックスイングして相手の判断を遅らせることが、林昀儒のロングサービスが効く大きな理由だが、そのほかにも心掛けているコツがあると林昀儒は言う。

「サービスを出すコースを分かりにくくするためには、体の向きで相手の目を欺くことを意識しています。具体的には、クロス(右利きの相手のフォア側)に体を向けつつ、ストレート(右利きの相手のバック側)にロングサービスを出します」

 ロングサービスを効かせるために、体の向きでコースをカムフラージュするという林昀儒。

 上の写真C-1~5と写真D-1~5は、ストレートへの横下回転ロングサービスとクロスへの横下回転ロングサービスをレシーバー側から撮影した連続写真だが、二つの写真を見比べると、インパクトの位置が異なる以外、上体の前傾角度や視線の置き方などがほとんど同じなのが分かるだろう。

 特に、ストレートへ出すときの林昀儒の左肩に注目してほしい。一般に、ストレートへサービスを出すときは、左肩がストレート方向へ少し開くため、それによってレシーバーはコースを察知することができる。しかし、林昀儒は、クロスへ出すとき同じように左肩をまったく開かずにストレートへ横下回転ロングサービスは出すため、相手からすると実際にサービスが飛んでくるまでコースを予測するのは困難だろう。

 二段式バックスイングで長短を分かりにくくし、体の向きをそろえてストレートとクロスへ出し分け、相手にコースを読ませない。これが、林昀儒のロングサービスが効くメカニズムだ。


(取材/まとめ=卓球レポート編集部)

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