現役トップ選手の中でも「教え上手」として名高い上田仁選手(岡山リベッツ)が、ツイッターで募集した卓レポ読者からの質問に答える「教えて!上D(ウエディー)」。今回は、岡山リベッツのチームメート吉田雅己選手(栃木県スポーツ協会)と町飛鳥選手(鹿児島県体育協会)をゲストに迎え、「バックハンドを打つときの親指」について、詳しくレクチャーしてくれました。
Q.バックハンドを打つときに親指を立てますか?
バックハンドの技術で親指を立てる選手と立てない選手がいますが、トップ選手はどちらの方が多いですか? また、親指を立てる場合と立てない場合のメリットはなんですか?(レイン@卓球さん)
A.微調整しながら、自分の正解を見つけよう
バックハンドのグリップは三者三様
上田 親指を立てるか立てないかは、完全に個人の好みだと思います。
僕はこれまで立てていませんでしたが、最近になって立てるようにしました。というのも、バックハンドを打つときに親指を立てていないと、手首が自由に使える半面、手首が利きすぎて無駄な動きが出やすく、角当てやカス当たりが多く不安定になりやすいデメリットがあると感じたからです。また、親指を立てると、親指がスイングを止めるストッパー的な役割をするので、力が伝わりやすく、ボールに威力を出しやすいと思います。
親指を立てないことのメリットは、フォアハンドが打ちやすいことです。だから、親指を立てずにバックハンドも打てる選手だったら、立てない方がいいのかなと思います。
町 僕は、どちらも何度か試してみましたが、親指を立ててバックハンドを打っていると、急にフォアハンドに切り替えたときに、手首が内側に入ってしまってフォアハンドが打ちにくいと感じることがよくありました。
それで、バックハンドとフォアハンドでグリップが大きく変わらないように、バックハンドのときも親指は寝かせた状態で打つようにしています。
吉田 僕は、親指を立てていないとバックハンドの安定感が出ないし、かといって立てすぎると手首が全く利かずに威力も出せないので、少しだけ親指を立てるようにしています。
フォアハンドのグリップとの連係も重要
上田 町が言ったように、親指を立てていると、フォアハンドを打つときに面が内側を向いてしまうので、ストレートに打ちづらいというデメリットがあります。打てないことはありませんが、フォアハンドがうまくて、シュートドライブやカーブドライブなどの技術を使いたい選手は、立てない方がいいかもしれません。
また、親指を立てると、手首が固定されてしまうので、技術の幅が狭まりますが、バックハンドのブロックやカウンターは圧倒的にやりやすくなります。ですから、やりやすさや、自分の重視するプレーを優先してグリップを決め、そのグリップを変えずに、フォアハンドもバックハンドも打つのがひとつのやり方ですね。
もうひとつのやり方として、例えば、オフチャロフ(ドイツ)はバックハンドの名手ですが、彼のフォアハンドとバックハンドの切り替えの練習を見ていると、毎回グリップを変えています。1球ごとにグリップを変えられるくらい練習して、それを体にしみ込ませるというやり方もあるでしょう。
出身校、世代によっても違いがある?
上田 僕ら3人は青森山田中高でずっと一緒でしたが、10年くらい前は、吉田安夫先生の考え方もあって、フォアハンド主体でプレーする選手が多かったので、バックハンドを打つときも親指をあまり立てない選手が多いと思います。
例外として、大矢(英俊)さんは、バックハンドがすごくうまくて、フォアハンドは巻く(ボールの外側を捉える)タイプなので、親指を立てていますが、そういう選手は青森山田出身では少ないですね。
一方で、今活躍している若い選手、戸上(隼輔)選手、宇田(幸矢)選手(ともに明治大学)、張本(智和)選手(木下グループ)などは、僕らから見るとバックハンドグリップ(親指を立てたグリップ)だと思います。僕らはフォアハンド主体の卓球だけど、彼らはバックハンド重視、バックハンド技術の幅が広いという違いがあるかもしれませんね。
このように、トップ選手を見ても、グリップはみんなそれぞれ違うので、誰々がこうしているから自分もそうするというのはお勧めしません。
卓球は、例えば、ちょっとスタンスを広くする、ちょっとグリップを変えるといったわずかな変化で、見た目には変わらなくても、自分の感覚はびっくりするくらい違います。親指の力加減を10%変えただけでも、感覚は大きく変わるものなので、微調整をしながら、自分の正解を見つけてほしいと思います。
まとめ=卓球レポート編集部