2021年全日本卓球選手権大会男子シングルスを制した及川瑞基(木下グループ)が初優勝の支えになった5つの練習方法を紹介してくれる特別企画。
3回目は、フリック強打を鍛える練習方法を紹介しよう。
※本文の技術解説は右利きプレーヤー同士の練習を想定しています
ストップに対するフリック強打を磨く
フォア前に来たストップに対してフリック強打する練習
フリックは、1番自信を持っている技術
試合では相手にストップ(ボールをネット際に短くコントロールする台上技術)されるケースが多いですが、そのストップをフリック(ボールを払うように打つ攻撃的な台上技術)で攻めることができると、相手にプレッシャーを与えることができます。そのため、今回紹介する練習は全日本前にかなりやり込みました。ちなみに、フリックは自分の中で1番自信を持っている技術でもあります。今回の全日本を振り返ると、フリックが得点につながるケースが多かったと思います。
フリックは得点力が高い上に、次のプレーにも連係させやすい技術です。強くなるためには欠かせない技術の1つだと思うので、ぜひ今回紹介するポイントを参考にしながら練習に取り組み、フリック強打をマスターしてください。
ポイント① バックスイングをできるだけ小さく抑える
この練習を行うときに、僕が心掛けているポイントは2つあります。
1つ目は、「バックスイングをあまり取らない」ことです。
フリック強打というと、強く打とうとしてバックスイングを大きく取ってしまいがちですが、そうするとタイミングや力加減が不安定になってしまいます。
そのため、僕がこの練習でフリック強打するときは、バックスイングをできるだけ抑えることを意識しています。フリックは、台上の短いボールに対して使う技術なので、小さなバックスイングでも十分に強く打つことができます。
小さなバックスイングからフリック強打するコツは、「打球の瞬間以外は腕から余計な力を抜く」ことです。この力加減を意識すると、手首がしなるように動き、小さいスイングでもボールを強くはじき打つことができます。打球の瞬間は、中指・薬指・小指の3本の指に力を入れるようにしています。
フォア前に来たストップに対するフリック強打(横から)
ポイント② ストップの落下地点にできるだけ体を近づける
この練習を行う上で、僕が心掛けているもう1つのポイントは、「ストップの落下地点にできるだけ体を近づける」ことです。そうして、ボールに体を近づけると、スイングの力が伝えやすくなり、コントロールもよくなります。
このポイントを踏まえ、フォア前に来たストップに対してフリック強打するときは、ストップの落下地点がラケットの正面または左側になるくらいまで足を動かすイメージでボールに素早く近づくことを心掛けています。
一方、フォア前に来たストップに対して体を近づけられなかったときは、思うように力が入らないので、無理してフリック強打しないことが大切です。
ポイント③ フリック強打がやりやすいサービスを出す
フリック強打を成功させるためには、これまで述べた技術的なポイントのほかに、「相手のストップが、フリック強打しやすくなるようなサービスを出す」ことも大きなポイントです。
具体的には、「縦回転系サービス」や「逆横回転(ボールを真上から見て反時計回りに回っている左横回転)系サービス」を出すと、相手のストップが、フリック強打しやすい軌道や回転になります。一方、横回転(ボールを真上から見て時計回りに回っている右横回転)系サービスを出すと、相手のストップに少し横回転がかかることが多くなり、フリック強打がしにくくなることを覚えておきましょう。
出すサービスの種類に加え、ストップの高さや回転量をよく見ることも、フリック強打を決めるための大切なポイントです。ストップが低かったり、ボールに回転が強くかかっていたりすると、フリック強打を成功させることが難しくなります。
このことを踏まえ、ボールをよく見て、少し浮いてきたストップや回転があまりかかっていないストップを選んでフリック強打するようにしましょう。一方、フリック強打が難しいストップが来たときは、無理に強くはじき打とうとせず、ロングタッチの(ボールを長く持つ)イメージで持ち上げるようにフリックし、安定性を重視してください。
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(取材/まとめ=卓球レポート編集部)