インドから世界のトップシーンへと躍り出たグナナセカラン。彼と対戦したトップ選手はかく言う。「特別すごいものはない。それなのに、気づくと沼に引き込まれている」。
トップ選手たちをも誘い込んでしまうグナナセカランの「沼」とは一体どんなものなのか。この特別企画では、グナナセカランの強さについて、本人のコメントをもとに分析していきたい。
2回目は、初回に引き続いてグナナセカランの多彩なブロックにフォーカスをする。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーを想定しています
相手の強打を誘ってカウンターを狙うソフトブロック
相手の特徴を分析し、そのデータを駆使して優位に立つことを強みにするグナナセカラン。そうしたインテリジェントなプレーの中核を担うのが、正確で多彩なブロックだ。前回は、グナナセカランの4つのブロックのバリエーションの中から、スピンブロック(伸ばすブロック)を取り上げた。今回は、残り3つのブロックに迫ろう。
はじめに紹介するのは、ソフトブロックだ。
ソフトブロックとは聞き慣れない言葉だが、その語感通り、軽いタッチでブロックし、打球のスピードをわざと遅くする技術のことである。
「ソフトブロックは意図的に織り交ぜます。ブロックの打球スピードや軌道が一定だと、相手にとってやりやすいからです。一方で、ブロックのスピードや軌道に強弱をつけると、相手はポジショニング(位置取り)やタイミングなどをいちいち合わせなければなりません。そのため、相手にやりにくさを与えることができます。
相手が私のソフトブロックを強打で狙ってくることを予測し、その相手の強打をカウンターするパターンは、私の得意戦術の1つです。この戦術は、相手に精神的なダメージを与えることができるインテリジェントなプレーだと思います」
グナナセカランの試合を見ると、相手のドライブ攻撃に対し、一見するとチャンスボールのようなブロック(ソフトブロック)を送ることがある。そうして相手の強打を意図的に誘ってカウンターするパターンはグナナセカランのプレーの妙味であり、彼の知られざる得点パターンの1つだ。
ソフトブロックのポイントについて、グナナセカランは次のように話す。
「ソフトブロックは、まず肩の力を抜いてリラックスしてラケットを握ります。そうして準備したら、相手のドライブを吸収するイメージで、ボールをラケットに軽く当てるように打球することがポイントです。
戦術的には、相手がスピードの速いブロックを予測しているタイミングを狙うなど、状況を読んで使います」
ソフトブロックは、相手にチャンスを与えてしまうリスクはあるが、その半面、機を見て使うことができれば戦術の幅を広げる可能性を秘めた技術だ。
グナナセカランが話してくれたポイントに加え、フォロースルー(打球後のラケットの動き)をできるだけ小さく抑えることを意識して、ソフトブロックに挑戦してみよう。
ドライブに対するソフトブロック
攻撃的な2つのブロック
カウンターブロックとパンチブロック
続いて、グナナセカランの残り2つのブロックのバリエーションを紹介する。
紹介するのは、「カウンターブロック」と「パンチブロック」の2つで、どちらも攻撃的なブロックだ。
「カウンターブロックは、自分から少し回転をかけて打ち返す攻撃的なブロック技術です。一方、パンチブロックとは、ラケット角度をフラットにして(立て気味にして)ボールをたたくように打つ攻撃的なブロック技術です。
『相手にどちらのブロックが効くか?』をよく分析した上で、この2つのブロックを使い分けます。
このほか、飛んできたドライブの高さによっても2つのブロックを使い分けます。具体的には、相手のドライブのバウンドが高いときは、パンチブロックを使います。一方、相手のドライブが低いときは、たたくように打つことが難しいので、カウンターブロックで攻撃するようにしています」
カウンターブロックは、相手のドライブをコンパクトなバックハンドドライブで打ち返す技術だ(連続写真A-1~6、B-1~6)。自分からしっかり回転をかけ返すため、ブロックというより、バックハンドのカウンタードライブに近い。
技術的には、ラケットを前方向へしっかり振り抜いているところを参考にしてほしい(連続写真A-3~5)。グナナセカランは、スイングの勢いで右足が前に出てしまうほどラケットを前方向へ振り抜いているが、このように体全体を使ってスイングすると、ドライブの球威に負けることなく、打ち返すことができる。
一方、パンチブロックは、ラケット角度をフラットにしてボールをパンチするようにたたき打つ技術だ(連続写真C-1~6、D-1~6)。
ラケット角度を立て気味にしてボールをよく引き付け、準備で曲げたひじを軽く伸ばしながら後ろから前へスイングしている点が参考になる。
紹介したカウンターブロックとパンチブロックは、守りから攻めに転じる技術で、グナナセカランの重要な得点源だ。グナナセカランが話してくれた使い分けや技術的なポイント、連続写真を参考にして、ぜひ自分のプレーに取り入れてみよう。
ドライブに対するカウンターブロック
ドライブに対するパンチブロック
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(取材/まとめ=卓球レポート編集部)