東京オリンピック男子シングルス銅メダルを筆頭に輝かしい成績を収め、今なお世界のトップで活躍するオフチャロフ(ドイツ)。オフチャロフといえば個性的なサービスの数々が印象的だが、中でも低すぎる構えから繰り出すバックハンドサービスは彼の代名詞だ。
この特別企画では、オフチャロフが自身のバックハンドサービスについて詳しく説明してきたが、ここからはバックハンドサービスからの3球目のパターンを紹介していく。
3球目のパターンの1回目は、フォア前への上回転サービスからの3球目のパターンを解説してくれた。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています
フォア前に上回転サービスを出した後は
フリックレシーブを待つ
サービスは、サービスそのものの質を高めることが大切ですが、それに加えて3球目のパターンを磨くことも大切です。3球目の質が高ければ、それが相手にとってプレッシャーになり、サービスの効果もさらに高まるからです。
それでは、1回目に紹介した(右利きの相手の)フォア前への上回転サービスからの3球目のパターンから紹介します。
フォア前に上回転サービスを出すと、相手はチキータやストップ、ツッツキでレシーブすることが難しいため、フリック(払い)で軽く合わせるようにレシーブしてくることが多くなります。そのフリックレシーブを待って、両ハンドドライブで攻撃することが、フォア前に上回転サービスを出した後の3球目の主なパターンです。
また、バックハンドサービスを出した後は自然とバックハンドが打ちやすい体勢になります。そのため、回転や長さにかかわらず、バックハンドサービスを出したら、バック側からミドルあたり(センターライン付近あたり)の範囲に来たレシーブに対しては、バックハンドで対応するようにしています。
これらを踏まえ、フォア前に上回転サービスを出した後の代表的な3球目のパターンとして、ミドルに来たフリックレシーブに対するバックハンドドライブと、フォア側に来たフリックレシーブに対するフォアハンドドライブの連続写真を下に紹介します。
どちらのパターンも、サービスを出した後は相手の長いレシーブを想定して台から素早く距離を取ること、3球目ではできるだけ早い打球点を捉えることがポイントです。
フォア前への上回転サービスからの3球目
ミドルに来たフリックレシーブに対するバックハンドドライブ
フォア前への上回転サービスからの3球目バックハンドドライブはオフチャロフの十八番だ。
サービス後、台から距離を取る際に、上体の前傾を崩さずにステップバックしている点が参考になる。
また、ミドルに来たフリックレシーブに対して、右足が左足よりも前のスタンス(足の構え)でバックハンドドライブしているところも注目だ。右足前のスタンスをつくるとバックハンドで打球するスペースが広く取れるので、ミドルに来たボールに対してスイングが窮屈になることなくスムーズにバックハンドドライブすることができる。
フォア前への上回転サービスからの3球目
フォア側に来たフリックレシーブに対するフォアハンドドライブ
フリックレシーブがフォア側に来た場合でも、打球点を落とさずにフォアハンドドライブで攻めることが大切だというオフチャロフ。
早い打球点を捉えるためには、上体をしっかりひねりつつも、ラケットを体よりも後ろへ引かないようバックスイングをコンパクトにまとめている点が参考になる。
オフチャロフは、このコンパクトな準備から非常に威力のあるフォアハンドドライブを放つが、そのためのポイントとしてスタンスに注目してほしい。オフチャロフの打球後のスタンスは右足が左足よりかなり前になっているが、これは足で床を蹴る力と体の回転を目いっぱい使った結果だ。この全身を使ったスイングが、オフチャロフがコンパクトなバックスイングにもかかわらず威力のあるフォアハンドドライブが打てる大きな理由になっている。
(取材/まとめ=卓球レポート)