「卓球界の賢人」こと上田仁が、その確かな実力と見識をもとに、さまざまな質問に答える人気企画「教えて!上D(ウエディー)」が復活!昨年の8月から日本を離れ、ドイツに拠点を移した上Dが、卓球についてはもちろんのこと、ドイツやヨーロッパ各地への転戦の日々についても伝えてくれます。
今回は、渡独して感じた日本とドイツとのプロの違いについて教えていただきました。
Q.日本とドイツとで「プロ」に違いは感じますか?
日本とドイツでそれぞれプロリーグに所属した上田選手に質問です。日本とドイツとで、プロについての違いを感じたところがあれば教えてください。(それいけこまつ:卓球レポートスタッフ)
A.日本に比べると、ドイツの方が選手寿命は長いと思います
日本とドイツとでは国の仕組みが当然違うので、質問に端的に答えるのは難しいですが、Tリーグができる以前に日本には古くから実業団チームがあり、選手を引退しても社員として会社に残ることができます。ドイツにそういうシステムというか習慣はないので、そこが日本は恵まれているところだなとドイツに来てあらためて感じました。
一方、選手寿命はドイツの方が長いですね。ブンデスリーガに所属するほとんどの選手は、生活のために1年でも長く選手でありたいと考えており、その積み重ねで選手生命が延びているのだと思います。
また、レベルの違いはありますが、陸続きのヨーロッパには多くの国にプロリーグが存在していることも、ブンデスリーガや各国のリーグに所属している選手の息が長い大きな要因だと思います。国をまたいでチームを移籍しながら自分の活躍の場を探すことができるので、プロ選手として活動し続けるチャンスが数多くあります。
情勢が異なる各国から選手が集まるブンデスリーガでは、同じプロでも人によってマインドや捉え方はさまざまですが、自分を選手として契約してくれるチームがあり、自分の身体がしっかりパフォーマンスを発揮できる限り、プロでいようと考えている人は多いと感じます。
自分自身、休養してからTリーグに復帰し、試合に出るまでは卓球に夢中になることができました。ところが、しばらくすると、「活躍できなければ翌シーズンはどのチームからも声がかからない。頑張って復帰したはいいが、やっぱり自分はもうすぐ選手ではいられなくなるのではないか」と、またおびえるようになりました。
その恐怖心からプレースタイルを変える勇気もなかったし、現状維持に気を取られてしまいました。もちろん、自分のことを信じてくれる人は周りにたくさんいましたが、自分自身が自分を信じ切れていなかった。自分の中で勝手に「負けても許せる相手」を決めつけていて、実際に負けると寿命が縮むような感覚でした。そんな恐怖心から早く抜け出したくて、引退という決断が何度も頭をよぎり、苦しい時期が続きました。
でも、ドイツに来てからは、「たとえブンデスリーガで結果が出せなくてもどこかの国のリーグでプレーできるだろう」と思えるし、そういう意味では卓球で生きていく自信がつきました。ヨーロッパでは毎週チャレンジャーという賞金大会も開催されているので、もしかするとヨーロッパの選手たちは、僕が日本にいた頃に抱えていた恐怖心のようなものはあまりないのかもしれません。
もう終盤だと決めつけていた選手生命も、まだまだ分からないし、これからと思えるようになったのは、ドイツで生活し、試合をしたからこそだと思います。
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(文=上田仁 写真=Ruoxi Qiu まとめ=卓球レポート編集部)