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ちょっと、それ貸して!!
第4回 及川瑞基 × 三部航平

トップ選手同士がお互いのラケットを交換して試打し、打球感や使いやすさなど、相手のラケットを評価し合う人気企画「ちょっと、それ貸して!」。第4回は青森山田中学校時代からの同級生で、昨年のインカレでは専修大男子28年ぶりの優勝に貢献した、及川瑞基選手と三部航平選手(ともに専修大)の登場です!
※両選手の使用用具は撮影が行われた2018年12月26日のものです



Mizuki_Oikawa
及川瑞基(専修大学)
右シェーク攻撃型。仙台ジュニアクラブ(宮城)出身。平成26年度全日本卓球選手権大会(ジュニアの部)男子シングルス優勝。平成30年度全日本大学総合卓球選手権大会(個人の部)男子シングルス優勝。前陣で繰り出す両ハンドの連続攻撃を武器に、現在はドイツ・ブンデスリーガ1部のケーニヒスホーフェンでエースとして活躍。専修大学3年生。

及川瑞基の使用用具(総重量=194g)
ブレード:バタフライ特注(アリレート カーボンシェーク)
アリレート カーボンを搭載した攻撃用シェークラケット

フォア面ラバー:テナジー05ハード
『テナジー05』の回転性能にさらなる威力を加えたラバー
バック面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー



Kohei_Sambe
三部航平(専修大学)
右シェーク攻撃型。鳳凰卓翔会(山形)出身。平成24年度全国中学校卓球大会男子シングルス優勝。平成27年度インターハイ男子シングルス優勝。平成25・26年度全日本卓球選手権大会男子ダブルス優勝。端正なフォームの両ハンドドライブを主軸としたオールラウンドプレーヤーで、ラリー戦を得意とする。専修大学3年生。

三部航平の使用用具(総重量=189g)

ブレード:バタフライ特注(ZLカーボンシェーク/インナーファイバー®仕様)
ZLカーボンを搭載したインナーファイバー®仕様の攻撃用シェークラケット

フォア面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー
バック面ラバー:テナジー80
回転性能とスピード性能のバランスに優れたラバー

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変化球の及川ラケットと正統派の三部ラケット


お互いの用具で打ってみて、全体的な印象はいかがですか?

及川:三部のラケットは、軌道が弧線を描けて、回転もすごいかかるので、結構いいですね。いい具合に年季の入ったラケットにちょっと軟らかいラバーがマッチして、打ちやすかったです。
 強いて欠点を挙げるなら、ドライブの引き合いが深く入らないところです。でも、それ以外はパーフェクトに近いです。

三部:及川のラケットは飛ばない印象が強かったですね。ラバーがフォア面『テナジー05ハード』、バック面『テナジー05』なので、フォア面『テナジー05』、バック面『テナジー80』の僕のラケットよりも飛ばすのが難しいイメージがありましたが、実際に打ってもあまり飛びませんでした。その分、台上プレー、特にストップとかツッツキはやりやすかったですね。
 ドライブも強く打ってもそれほど飛んで行かずに台に収まってくれるので扱いやすいことは扱いやすいんですが、「球が行く感覚」が乏しいというかボールに威力が出にくいので、ラリーはちょっと厳しいと思いました。

及川:僕のラケットは『アリレート カーボン』のアウターだから、素材的にはそんなに飛ばないということもないと思うけど、(湿気を吸って)木材が軟らかくなってきているのと、ラバーが新品じゃないので、それでちょっと飛ばなくなってきてるかもしれません。

【フォアハンドドライブ】
スイートスポットを外しても打てる三部ラケット

及川:三部のラケットでフォアハンドドライブを打つと、スイートスポットに当たったときはもちろんいいボールが出ますし、ラケットの端の方に当たったときも、回転がかかるので、打っている感じは結構良かったですね。

三部:及川のラケットは、思い切り強く打ったときはいいボールが行っている気がするんですが、全部のボールをいい状態で打てるわけではないので、そういうときにちょっとボールが行かない感じがしました。回転はかかりやすいけど、スピードはそれほど出ないかな。

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【バックハンドドライブ】

回転はかかかるけど飛ばない
及川のバックハンドは欧州スタイル?

及川:三部のラケットはバックハンドドライブはすごいやりやすくて、振り切ったときも台に収まるので安心して打つことができました。『テナジー80』は下がるとちょっと飛ばない印象ですが、前陣だとやりやすいと思いました。

三部:バックもフォアと一緒で、及川のラケットは回転がかかるけど飛ばない印象です。回転がかかってて球が飛んでこない、まさに及川のプレーというか(笑)、そういうボールが多くて、試合をやっていても「及川」という感じですね。

及川:ヨーロッパスタイル?(笑)

三部:そういうプレースタイルがこのラケットと関係あるのかなと思いました。僕のラケットだと全体的に打ちやすく、コントロールもしやすく、ボールもいい具合で飛んでいくので、きれいなボールが行ってしまうと思いますが、及川のラケットだと回転のかかったボールがゆっくり飛んできます。

【カウンタードライブ】
打ちやすいのは食い込みやすい三部ラケット

及川:三部のフォア面は『テナジー05』なので、僕の使っている『テナジー05ハード』よりも少し軟らかいのですが、ボールがラバーに食い込むので、ループドライブの処理はやりやすくていいですね。バック面も同じですが、振り切っても安心して入るイメージです。
 慣れるまではちょっとどこに飛んでいくかわからない感じでしたが、打ち慣れてきたら感覚がわかってきました。

三部:ループドライブに対してはミスが多くて、あまり入りませんでした。僕は食い込ませてカウンタードライブするタイプなので、飛ばさないで引っかけて打つ及川のラケットは使いづらかったです。でも、引っかけて打つタイプの選手は打ちやすいんじゃないかと思います。
 あと、僕のラケットで打った及川のループドライブの質が高すぎました(笑)

及川:これは確かにループドライブもいいですね。キュンって。

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【サービス】

ショートサービスが出しやすい及川ラケット

及川:三部のラケットは下回転が結構切れますね。ドライブと同じで、振り切っても回転がかかって、台上の深いところで2バウンドするので、サービスも出しやすいですね。ディスりたくても、ディスるところがないです。

三部:サービスはそれほど僕のラケットと違いを感じませんでした。でも、及川のラケットは飛ばない分、台からは出づらいと思いました。
 及川はサービスが短いんですよ。いつも3バウンドするくらい短くてチキータに入れないのですが(笑)、このラケットが飛ばないから、短く出せるんだと納得しました。

【台上技術】
チキータしたいなら
『インナーフォース』に『テナジー80』?

及川:台上は全部良かったですね。特に、バック面の『テナジー80』でチキータしたとき、振り切ってもいいボールが入っていました。バック面は『テナジー80』にしたいです(笑)。このインナーファイバー®のZLカーボンと『テナジー80』が合ってますね。

三部:アウターの『アリレート カーボン』だと、両面とも『テナジー05』の人が多いですよね。『インナーフォース』を使っている選手は『テナジー80』を貼っている人が結構いるんですよ。アウターの『アリレート カーボン』に『テナジー80』だと、たぶん球が軽くなるんじゃないですかね。

及川:『インナーフォース』に『テナジー80』の組み合わせは殿堂入りですよ! チキータしたいならこの組み合わせですね。

三部:及川のラケットは、台上技術はやりやすかったです。ただ、飛ばそうと思ったときに飛ばなすぎてミスすることがありました。

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【ドライブの引き合い】

適度な弧線、高い打球音の三部ラケット

及川:三部のラケットは、スイートスポットに当たったときのギュイーンっていう感じの弾道が好きですね。まっすぐ飛びすぎると安心感がありませんが、ちょっと緊張したときなどもちょうどいい感じの弧線を描いてくれて、引き合いもいいですね。

三部:またしても高評価ではありません(笑)。僕のラケットはインパクトのときに「カキーン」とか「コーン」とか高い打球音がするのですが、及川のラケットはどちらかというと「バシッ」という感じの低い音で、あんまりですね(笑)
 及川はパワーがあるし、技術もあるので、どんな用具を使っても対応できるところがすごいと思います。僕は同じ打ち方しかできなくて、いつもスイートスポットに当たるので......。軽い自慢ですね(笑)

及川:他人のラケットをディスりつつも。

三部:あと、下がってフィッシュをしたときに僕は普段オーバーミスが多いのですが、及川のラケットは飛ばしても飛ばしても飛んで行かないという感じがあって、「ああ、及川のフィッシュってこれか!」と思いましたね。これは褒めてます、一応(笑)

【ブロック】
ブロックのバリエーションが豊富な及川ラケット

及川:三部のラケットは『テナジー80』の打球感が軟らかいので、ブロックはすごく止めやすかったです。

三部:僕のラケットだと、軽く当てたら飛んでいく感じですが、及川のラケットは止めたり、伸ばしたり、アレンジして返したときの方がいいボールが行くし、ミスも減るという印象です。及川の色々なバリエーションのブロックはこのラケットの特徴が出てるんだなと感じました。

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【ラバーの違い】

『05』『80』『05ハード』
それぞれの良さと難しさ

及川:三部のフォアの『テナジー05』は回転がかけやすい分、台から下がって自分から強く打つ分にはいいのですが、相手の回転の影響も受けやすいので、そこに難しさを感じるときがあります。
 三部のバックの『テナジー80』は、僕の『テナジー05』ほどは引っかかりませんが、打ってよし、ブロックもよしで、特に『インナーフォース』との組み合わせがいいですね。

三部:及川のフォア面の『テナジー05ハード』を僕は打ったことがありませんでしたが、思ったよりも『テナジー05』に近くて、それほどクセもなく打ちやすいラバーでした。
 及川のバック面の『テナジー05』は、回転に影響されやすくて、チキータするときや、バックハンドを伸ばすときも引っかかりすぎたりして難しい印象がありました。僕の使っている『テナジー80』の方がアバウトに打っても台に入りやすいところがあります。『テナジー05』の方が威力が出て攻撃力は高いけど、『テナジー80』の方が安定する。どちらも良いところがあり、悪いところがありという感じだと思いました。

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【まとめ】

この用具、こんな人におすすめです

及川:三部のラケットはバランスがいいので、両ハンドでキュンキュンやりたい人に特におすすめですね。フォアハンド主戦でプレーする人にもいいと思いますが、弧線を描きたい人や回転をかけたい人におすすめの組み合わせです。

三部:及川のラケットは、僕は使いこなせませんでしたが、及川が好きな人におすすめしたいです。及川になりたい人(笑)とか及川みたいなちょっといやらしい感じのプレーがしたい人が使ったらいいんじゃないかなって思います。

【おまけ】
すぐ変える派? 変えない派?

及川:僕は結構用具マニアで、ラケットもラバーもよく変える方ですね。大事な試合の2,3日前でもこれだと思ったら変えることがあります(笑)。でも、実際にはそれほどこだわりはなくて、何でもいいというと語弊がありますが、悪い用具ってないと思っています。全部いい(笑)

三部:僕は変えない派ですね。他人のラケットを打たせてもらっても「いい」と思うことが少ないですし、たまにいいなと思うものもありますが、どこか気に入らないところがある。自分のラケットだと完全に安心して打てるので、全然変えられないです。

及川:僕はラバーの貼り方に少しこだわりがあって、ブレード面よりも1ミリくらい大きく切るんです。そうすると、気持ち飛ぶようになるんですよ。ちょっと重くなって打球感が響くというか、球を持つようになる。ちょっとした遊び心で、プレーにいやらしさが増します(笑)

編集部注:「ラバーは、ラケット本体の外周いっぱいまで、しかも外にはみ出ないように覆うものとする」というルールがある。とはいえ、ラバーをラケットと全く同じ大きさに切るには熟練がいるため、1ミリ程度のはみ出しであれば許容されるケースが多い。



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 10年の長きに渡ってライバル関係を続けてきた両者ながら、そのプレースタイルや用具の嗜好は驚くほど異なることが分かった。彼らの使っている用具や今回の話を念頭に実際のプレーを見てみると、より一層味わいが増すだろう。
 また、三部には使いにくかったようだが、『アリレート カーボン』のブレードに『テナジー05ハード』『テナジー05』という及川のラケットも比較的ポピュラーな組み合わせであることは念のために付記しておこう。

(取材=猪瀬健治 文=佐藤孝弘 動画=小松賢)

『テナジー05ハード』

回転性能に優れる『テナジー05』に、さらなる威力を加えるため、より硬めのスポンジを採用したのが『テナジー05ハード』です。「スプリング スポンジ」の特徴である、思い通りの打球を生み出す感覚を維持しつつ、ハードなスポンジが強いインパクトに応え、ワンランク上のパワープレーを可能にします。
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