先日、水谷隼は、「水谷隼が選ぶ世界のベストサーバー・TOP3」という企画で、サービスの名手として馬龍(中国)、オフチャロフ(ドイツ)、ボル(ドイツ)を挙げた。この3選手は、サービスに限らず、サービス後の展開、そしてプレー全体の強さが際立つ選手たちだった。
一方、サービスそのものがすごい選手として、水谷が挙げたのはパー・イェレル(スウェーデン)だった。
「スウェーデンのイェレル。すごいですね」
水谷は2014年3月のドイツオープン準々決勝でイェレルと対戦。ゲームカウント4対2(11対8、6対11、11対4、8対11、11対9、11対8)で勝利したものの、イェレルのサービス、そしてサービスからの攻撃に手こずった感があった。
なお、月刊「卓球レポート」2016年9月号では、イェレルを「強烈な変化でエースを連発するビッグサーバー」と表現し、彼のサービス(逆横回転サービス)を次のように解説した。
左足に重心をかけた大きなバックスイングで
警戒心を抱かせる
近年のトップ選手のサービスは、3球目以降のラリーを見据えて、威力よりもコントロールに重きを置く傾向が見られる。しかし、中にはサービスエースや決定機をつくることを狙って強力なサービスを出す、いわゆる「ビッグサーバー」と呼ばれるトップ選手もいる。今月は、ビッグサーバーの筆頭ともいえるイェレル(スウェーデン)のサービスを取り上げよう。
連続写真は、イェレルが得意とする逆横回転サービスだ。
上体を前傾させた構え(写真1)から、右足のつま先を上げ、左足に重心をしっかりかけた大きめのバックスイング(写真2~3)には、相手に「すごいサービスが来そうだ」と警戒心を抱かせる雰囲気がある。
打球後に面を上に向け
下回転をかけたようにカムフラージュする
イェレルのサービスは、トップ選手たちが判断ミスを繰り返してしまうほど変化が分かりにくいが、そのポイントとして注目したいのが「打球後のラケットの動き」だ。
イェレルは、ラケットを体に巻くようなスイングでボールの正面を打った後(写真6~8)、ラケットの打球面を上向きにすることによって(写真9)、下回転サービスを出したかのように相手に印象付けている。左足から右足への重心移動を使った速いスイングの中で、こうしたカムフラージュモーションを行うので、相手はサービスの変化が分からなくなる。
彼の逆横回転サービスは、世界中の選手にとって大きな脅威になるだろう。
取材=猪瀬健治 文=川合綾子
※文中敬称略
※写真は2016年ジャパンオープン