世界卓球選手権大会やオリンピックを含むさまざまな大会に出場し、世界のトッププレーヤーたちと何度も対戦している水谷隼が、これまで対戦した中で1番強かった選手として挙げたのは、意外にも中国選手ではなかった。
「ファゼカシュって選手ですね。ハンガリーの。たしか中学生の頃に、4ゲームとも3点くらいで負けました」
ファゼカシュ。そう聞いて、すんなりその選手を思い浮かべることができる人が、どれだけいるだろうか。
水谷は2003年11月のドイツオープンでファゼカシュ(ハンガリー)と対戦し、2対11、4対11、5対11、2対11というスコアでストレート負けを喫した。14歳の時だった。
ファゼカシュは右利きのシェーク攻撃型。打球点が早い3球目バックハンドドライブを放つ。そのほかに際だった特徴は挙げにくいが、ファゼカシュはサービス権を持った時の得点率が高い。サービスそのものや3球目での得点率は高く、サービスからの展開で主導権を握っていく傾向がある。
2003年のファゼカシュ戦がどのようなものだったのか、今になって確認する術はないが、水谷としてはよほど印象に残っていたのだろう。
それにしても、馬龍(中国)ではなくファゼカシュの名を挙げて、私たちの意表を突いてくれる水谷選手のサービス精神(?)が、なんだかうれしかった。
取材=猪瀬健治 文=川合綾子
写真提供=国際卓球連盟(ITTF)
※写真は2016年のもの
※文中敬称略