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強化のフロントライン29
世界卓球2019ブダペストの評価③
女子は中国と日本の二強時代に

~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
 日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。
 今回は、世界卓球2019ブダペスト(個人戦)から見えた女子の勢力図について宮﨑強化本部長が話してくれる。

孫穎莎vs伊藤美誠で垣間見えた
中国の組織力の強さ

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女子シングルスの表彰台を独占した中国。依然、世界の盟主は中国だ


 前回は、世界卓球2019ブダペスト(以下、世界卓球)で感じた男子の世界の情勢についてお話ししました。
 今回は、女子の世界の勢力図について述べてみたいと思います。
 
 男子は中国を筆頭に、世界中に強豪国や強豪選手が分散している印象でした。一方、女子は、シングルスの結果を見れば一目瞭然ですが、強い国とそうでない国との差がよりはっきりしてきました。
 トップはやはり中国です。
 女子シングルスにエントリーした劉詩雯、陳夢、丁寧、王曼昱、孫穎莎の5人全員がベスト8以上に進出し、同士打ち以外では負けなかったことが、その強さを証明しています。

 中国の強さが特に表れていたのが、女子シングルス3回戦の孫穎莎対伊藤美誠の試合です。
 伊藤の変幻自在なプレースタイルを踏まえると、彼女の対策をするのはいかに中国でも難しいだろうと思っていましたが、孫穎莎は見事に伊藤を攻略しました。この試合の評価は別の機会に譲りますが、孫穎莎のプレーで光っていたのが、戦術の一貫性です。
 普通であれば、伊藤の最大の武器である表ソフトラバーでのバックハンドが待つバック側にボールを集めるのは怖いものですが、孫穎莎は徹底したバック攻めで伊藤を退けました。そのぶれないコース取りからは、孫穎莎が表ソフトラバーでのバックハンド対策を相当に積んできたことが伺えました。
 世界卓球のドローは直前に決まるので、中国側からすると誰が伊藤と対戦するのか分かりません。そうした状況を踏まえると、孫穎莎が見せた対伊藤戦術は、孫穎莎だけでなく、中国の主だった選手が共通して認識し、身に付けていると見るべきです。
 孫穎莎対伊藤の試合は、孫穎莎の戦術力や技術力の高さもさることながら、国を挙げて対伊藤戦術を練っている中国の組織力の底力が垣間見える試合だったと思います。

日本はベスト8に二人が入り
中国に続く勢力であることを示した

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安定したバックハンドでベスト8に勝ち上がった加藤美優


 女子シングルスの表彰台は中国が独占しましたが、次に続いたのが日本です。
 日本は、石川佳純、伊藤美誠、平野美宇、佐藤瞳、加藤美優の5人が女子シングルスに出場しましたが、その内、平野と加藤の二人がベスト8に入りました。石川がベスト8決定戦で杜凱琹(香港)にゲームオールの逆転で惜しくも敗れてしまいましたが、石川が順当に勝利していれば、女子シングルスのベスト8は中国と日本が独占していました。加えて、伊藤は孫穎莎に敗れましたが、その実力は世界が認めるところですし、カット主戦型の佐藤もベスト16まで勝ち上がり、王曼昱とも非常に惜しい試合をしました。
 これらの結果を踏まえると、今回の世界卓球からは、中国が頭一つ抜けていますが、その下に日本、日本の下にやや離れて香港や中華台北が続くという構図が見えてきます。中国の方がまだまだ優勢ですが、世界の女子卓球界は「中国と日本の二強時代を迎えた」と言えるでしょう。

 中国、日本の二強に加え、香港や北朝鮮などアジア勢の隆盛が目覚ましい一方、ヨーロッパ勢が今回の女子シングルスのベスト16に一人も勝ち上がれなかった現状は、日本の強化本部長を離れ、一人の卓球人として寂しく思います。
 世界卓球は、アジア勢の緻密さや速さと、ヨーロッパ勢の創造性やパワーがぶつかり合うことで盛り上がりますし、それがプレーの進化や卓球界の発展につながっていきます。ヨーロッパ勢には、ぜひ奮起を期してほしいと思います。

(取材=猪瀬健治)

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