2020年4月1日に発売の『ディグニクス09C』。ハイテンションラバーの弾みを持つ粘着性ラバーとして、多くのユーザーの注目を浴びているこのラバーだが、既に一部のトップ選手が使用し、好成績を残している。
この企画では、使用用具をディグニクス09Cに変更したトップ選手たちのコメントから、このラバーの秘めたポテンシャルに迫っていく。今回は、このラバーの開発段階から携わり、「私にとって間違いなくベストのラバー」と断言するティモ・ボル(ドイツ)のコメントを紹介しよう。
ボル(ドイツ)
左シェーク攻撃型。2020年ヨーロッパ・トップ16優勝。精緻を極めた台上からのループドライブ、カウンターを武器に、10代からヨーロッパを代表する選手として活躍し、今もなおトップランカーとして君臨し続けている(2020年3月時点で世界ランキング10位)
ブレード:ティモボル ALC
フォア面ラバー:ディグニクス09C
バック面ラバー:ディグニクス09C
「ずっとこんなラバーでプレーしたいと思っていた」
ディグニクス09Cは、開発段階から深く関わってきたラバーで、ツブ形状、シートの粘着具合、スポンジの厚さなど、さまざまなテストを繰り返してきましたが、私にとっては間違いなくベストのラバーだと思います。ずっとこんなラバーでプレーしてみたいと思っていました。今はこのラバーでプレーできることをとてもうれしく感じています。
性能面は、バタフライがこれまで作ってきたラバーとは、方向性が全く異なるラバーだと思います。回転がかけやすいだけでなく、ボールをつかむ力が強いのが特徴です。
まず、特筆すべきは回転性能の高さです。ドライブを打った時に打球が高い弧線を描いてくれるので、苦しい体勢で、手だけで打った場合にも、しっかりと回転がかかり、きちんと弧線を描いて相手コートに収まってくれます。
また、回転量の多いサービスが出しやすいのもディグニクス09Cの大きなメリットだと感じています。他のラバーで回転をたくさんかけようと思うと、薄く捉える必要がありますが、当て方が薄すぎてもきちんと回転をかけることができません。その点、ディグニクス09Cだと、厚く当ててもしっかりと回転をかけることができるので、コントロールもしやすくなったと感じています。
また、打球点を落として打球した際に、他のラバーではあればシートで滑ってしまうようなボールも、ディグニクス09Cなら、しっかりつかんで回転をかけることができます。
次に、回転をかけ返す能力が非常に高いのも、このラバーの特徴です。ただ単に回転がかけやすいというだけでなく、相手の回転をかけたボールに対して、かけ返す(自分の回転にして返す)ことが容易にできます。つまり、カウンタードライブが安定し、威力も増したと感じています。
また、プラスチックボールになってから、チキータが多用されるようになり、そのチキータに対して攻撃的に対応することは、現代卓球では必須の技術になりましたが、ディグニクス09Cはこのような必要性を満たす、時代に適したラバーだと言えます。
コントロール性能の高さもディグニクス09Cの特徴として挙げないわけにはいきません。球持ちがよいので、しっかりとボールをつかむ感覚があり、ボールがラバーに当たっている時間が長いという感覚があります。そのため、コントロールしやすいと感じています。
以前使っていたテナジー05ハードだと、例えば、カウンタードライブを打つ時に、相手の打球を正確なタイミング、ラケット角度で捉えないとミスしてしまう印象がありますが、ディグニクス09Cなら理想的な打球点から多少ずれてもコントロールできると感じています。
私のプレーも変わりました。年齢を考慮すると、台から下がって大きなプレーをするのはあまり得策ではありません。なるべく少ないラリー回数で、早い段階で決めるのが理想です。その点で、前陣でのプレーに強さを発揮するディグニクス09Cは、私の求めるスタイルにマッチしていたと言えます。
最初に言った通り、これまでのバタフライのラバーとは方向性が全く異なるラバーなので、自分のプレーを変えなければいけない部分はありましたが、今までよりも台に近いところでプレーしたり、タッチ(打球感覚)をディグニクス09Cに合わせて変えたりしながら、自分のプレースタイルをラバーに合わせていくことで、比較的簡単に移行できました。ラバーを変えることで自分のプレーに起きたいい変化を、いつも感じながらプレーすることができていたためです。そのせいか、スピード性能では、当然テナジー05やディグニクス05の方が優れていますが、その点にとらわれることはありませんでした。
このラバーは、回転がかけやすいので、自分でコントロールすることを好む選手にお勧めしたいですね。プレーのテンポを変えることも比較的容易なので、相手がやりづらいと感じるようなプレーをすることも可能だと思います。
(取材=卓球レポート編集部 写真提供=ITTF)