2020年4月1日に発売の『ディグニクス09C』。ハイテンションラバーの弾みを持つ粘着性ラバーとして、多くのユーザーの注目を浴びているこのラバーだが、既にボル(ドイツ)ら一部のトップ選手が使用し、好成績を残している。
この企画では、使用用具をディグニクス09Cに変更したトップ選手たちのコメントから、このラバーの秘めたポテンシャルに迫ってきた。ラストを飾るのは、1月にバタフライとのアドバイザリー契約を発表し、同月に行われたドイツオープンで樊振東(中国)を破った好調のオフチャロフ(ドイツ)だ。ディグニクス09Cを「長期的には全ての選手に恩恵がある」と絶賛するオフチャロフが、このラバーの魅力を余すところなく語ってくれた。
オフチャロフ(ドイツ)
右シェーク攻撃型。2019年ヨーロッパ・トップ16優勝。2017年男子ワールドカップ優勝。個性的なサービスからの威力のある両ハンドドライブで、ボルとともに長らくドイツの両翼を担う。中陣からの威力のあるバックハンドは強烈
ブレード:特注(アリレート カーボンシェーク)
フォア面ラバー:ディグニクス09C
バック面ラバー:ディグニクス05
「長い目で見れば、どの戦型にも恩恵があるラバー」
-ディグニクス09Cを使う以前に、用具に関してどのような課題を抱えていましたか?
私が以前使用していた用具では、相手のボールの回転に合わせて、正しいラケット角度を見つけなければ返球できませんでした。そして、プラスチックボールへの変更でさまざまなボールが発売され、相手の打球の回転もさまざまになり、その都度正しい角度を探さなければならなかったのです。
試合中、そうした難しい状況でミスをし始めると、動きが悪くなり、自信を失ってしまいます。次々にこうした負の連鎖が起きてしまうのです。それが問題でした。
-なぜラバーをディグニクス09Cに変更したのですか?
私がディグニクス09Cに変更したのは、もう正しいラケット角度を探さなくてもよくなるからです。それをラバーがやってくれるのです。
相手のボールの回転が多くても少なくても、ラバーがそれを吸収してくれるので、適正な角度を見つける必要がありません。ただそのままラケットを振れば、あとはラバーがやってくれます。これは試合では大きな自信になります。
-プレーはどのように変わりましたか?
自信を持ってプレーできるようになりました。今はもう「相手は何をしてくるだろうか?」とか「自分はどうすればよいか?」ということに煩わされなくなりました。ただ正しい動作さえできていれば、試合中のボールコントロール、コース取りも回転量もよくなるのです。
-回転量が増えた技術はありますか?
ディグニクス09Cは本当に独特なラバーです。このラバーは粘着性があるので、台上やサービス、レシーブなどの場面で、ボールにスピードが出ません。これは素晴らしいことで、緊張していたりプレッシャーがかかる状況でも、サービスやレシーブのコースがコントロールでき、長さの調節もできるのです。
一方で、回転のかかったボールを打つ時(カウンターする時)は、スプリング スポンジXと粘着性のシートのおかげで、打球は高い弧線を描き、回転量が多く、質の高いボールを打つことができます。
2つのことが、この1つのラバーでできるのです。遅いボールを打ちたい時には遅いボールが打てて、速いボールを打ちたい時には速いボールが打てるラバーですね。
-スピードが増した技術はありますか?
前進回転のかかった全てのボールに対して、特に、相手がスピードの遅い、回転量の多いボールで攻撃してきた場合に、強い回転のカウンタードライブをするのが本当に簡単になりました。相手の回転を利用して、それに自分の回転を加えることで、回転を倍にして加速するような感じです。
他のラバーでカウンタードライブを打つと、初速は速くても、ネットを超える頃にはボールは遅くなってしまいますが、ディグニクス09Cのボールの飛び方は全く違います。相手も対応しにくいボールになっていると思います。
-安定性が増した技術はありますか?
1番安定性が増したのは、台上技術です。
私にはいいサービスがありますが、相手がうまく私のサービスの回転に対処し、ストップレシーブしてきた時に、私は強く回転をかけ返さなければなりません。これは非常に難しい技術です。
これがディグニクス09Cだと、台上ではスピードが出ないので、安定性が高く、コントロールもしやすくなります。素晴らしいことです。
一方、相手が回転量が多くて低いボールをどこに打ってきたとしても、相手の回転を吸収して短く返すことができます。
-コントロールしやすくなった技術はありますか?
基本的に全ての技術です。すでに話した通り、ディグニクス09Cは台上ではスピードが出ずに、ボールを長くつかむことができるので、コントロールできます。もし、ボールがラバーに当たってすぐに飛び出してしまったら、ボールをコントロールする時間がありません。ボールを長くつかむことができれば、コントロールする時間が長くなることは明白です。これがディグニクス09Cの最大の利点です。
-カウンタードライブはどのように変わりましたか?
私は以前、カウンタードライブが得意でしたが、プラスチックボールに変わってから、相手のボールの回転量がわかりにくく、こちらも回転をかけにくくなり、カウンターは難しくなりました。
ところが、ディグニクス09Cを使い始めてからは、少し対応が遅れても90%、あるいは、100%の力でカウンタードライブできることに驚きました。今はとても楽しいですし、練習も楽しんでいます。
-ループドライブの質も上がりましたね?
非常にうれしく思っています。ドイツオープンでの樊振東戦を見ていただけると、彼が試合の前半は私のフォア側を攻める戦術だったことがお分かりになるでしょう。私がフォア側のボールに対して、早い打球点でボールを捉え、コースもうまく突いたので、彼は驚いていました。
そして、彼は私のバック側を狙い始めましたが、私はバックハンドの方が得意なので、それにも対応できました。ですから、彼の戦術が思い通りにいかず、焦っているのを感じました。
-どのプレー領域でプレーしやすいと感じますか?
前中陣(台から1~2メートルのところ)では、相手の打球を利用するか、自分の力で打球するかを選ぶことができますし、ラバーでボールをつかむことができるので、リズムを変えたり、回転量を増やしたりすることもできます。
後陣では、力に頼らずに、前陣とは異なるさまざまな技術を試してみる必要があるでしょう。
-ディグニクス09Cに変えて難しくなった技術はありますか?
「難しい」とは少し違うかもしれませんが、例えば、サービスの時など、このラバーでは台上ではスピードがあまり出ません。
以前、私はサービスが長くなってしまって、相手にレシーブから攻められるという問題がありました。
ディグニクス09Cに変えたばかりのころは、私のサービスは短すぎました。それくらい今までとは違うラバーだったんです。サービス練習は今も続けていますし、どんどんコントロールは良くなってきています。より多くの回転をかけることもできるようになりました。
今は、サービスが台から出てしまうのではないかという不安を持たないようにしています。少し打法を変えなければなりませんでしたが、長い目で見れば、回転量が増やせるので有利になると思います。
-ディグニクス09Cはどのような選手にお勧めしますか?
正直な意見ですが、長い目で見れば、全ての戦型の選手にとって有利になると思います。
初めてディグニクス09Cを試打して、ドライブを少し打った選手が、これまで使用していたラバーと感覚が全く違うので、「自分には合わない」というのは想像できます。
でも、もう少し時間をかけてほしいですね。特に、試合での利点を時間をかけて評価してみるべきです。これまで私がプレーしてきた全てのラバーと比べても、多くの利点があるので、長期的には全ての選手にとって恩恵があると思っています。
ただ、例外的に、ボールに回転をかけない選手、スマッシュを多用する選手には向かないでしょう。フォアでもバックでも、スマッシュを多用する選手であれば、テナジー05やディグニクス05のようなラバーを試した方がいいかもしれません。
-ディグニクス09Cはフォア面とバック面のどちらに合うと思いますか?
私はフォア面にこのラバーを使用しています。私はバックハンドには元々自信があるので、ラバーの助けが必要だとは感じていないのです。
バック面にも使えば、長い目で見れば有利になるかもしれませんが、オリンピック前の今はその時期ではないと思っています。フォア側には問題があったので、さまざまなメリットを感じています。
例えば、フォアハンドが不安定、バックハンドが不安定、あるいは、サービスのコントロールが難しいなど、試合の重要な場面でコントロールが難しいと感じている選手がいたら、ディグニクス09Cに変えた方がいいでしょう。
-ドイツオープンで樊振東に勝てた理由は何だと思いますか?
理由の一つは、これまで試合で知られていたような私の弱点が、ほとんどないようなパフォーマンスができたことだと思います。それはフォア面に貼ったディグニクス09Cのおかげです。
樊振東は基本的に弱点のない素晴らしい選手です。それでも、私は不利には感じず、ほとんどのポイントは五分五分だったと思います。そして、最終的には私がほんの少し、彼よりラッキーだったのです。
でも、2020年という重要な年のスタートに素晴らしいパフォーマンスができて、自信をつけることができました。
<オフチャロフのインタビュー動画はこちら>
(取材=卓球レポート編集部 写真提供=ITTF)