2019年全日本卓球選手権大会ジュニア男子で決勝を争った2人が、今年の全日本では一般の部でともに表彰台に登り、新世代の台頭を印象付けた。同級生でプライベートでも互いをよく知る宇田幸矢と戸上隼輔は、この春、ともに明治大学に進学。数多の名選手を輩出してきた卓球部に入部した。
だが、日本の次世代を担う2人の新生活は、思い描いていたものとはかなり違うものになったのではないだろうか。卓球レポートは、緊急事態宣言が解除され、規定練習が再開された明治大学の練習場を訪ね、コロナ禍でどのように過ごしたか、先の全日本について、また、卓球選手として、友人としての互いについて余すところなく語ってもらった。
初回は、大学での新生活の感触などを紹介する。
「プロフェッショナルという覚悟を持って卓球に集中したい」(戸上)
卓レポ 4月から、新大学1年生としてどのような生活を送っていましたか?
戸上 緊急事態宣言が出て以降は、(高校でやっていたような)規定練習がなくなってしまって、自主練習が主になったので、毎日、半日練習をやって、ここ(明治大学卓球部の練習場)でトレーニングを継続してきました。
「帰省してもいい」とは言われていましたが、僕はこっちに残って、寮に残っている他の選手にお願いして練習してもらったり、トレーニングをやっていました。
卓レポ 練習の質や量は高校生の時と変わりましたか?
戸上 今までは合宿や大会がメインでやってて、自由に使える時間は少なかったのですが、これだけ時間が余っていると、どうこの時間を生かそうかと考えて、練習の中で課題に取り組んだり、トレーニングにも時間をかけてやっています。
今まであまりしてこなかった、細かい技術を練習に取り入れたり、試合の中でも何本使うかわからない技術(使用頻度の少ない技術)の練習もやっています。
宇田 僕自身は、緊急事態宣言が出た後、帰省してもいいということだったので、この近くにある実家で寝泊まりして、練習は相手を見つけて自主練習という形でやっていました。
でも、緊急事態宣言が出た頃から腰が少し痛みだして、休みながらゆっくりやっていましたが、痛みが取れなかったので、病院に行って検査したら、けがをしている状態でした。そこから2カ月くらいは練習もトレーニングもせず、リハビリに取り組んでいます。
卓レポ 明治大学卓球部という環境はどうですか?
戸上 今まで(野田学園高校時代)は卓球場と寮が離れたところにあったので、同じところに卓球場と寮がありましたが、(明治大学は)いつでも練習でき、トレーニングルームも備わっているので、これは成長できる環境だと思いました。
宇田 高校の時(JOCエリートアカデミー時代)は監督やコーチに予定を決めてもらって、コーチに頼っていた部分がありましたが、大学に入ってからはどんな練習に取り組むか、何に時間を費やすかというのを自分でコントロールすることになるので、そこをうまく使うことで、さらに自分自身を成長させることができる場所だと思っています。
卓レポ 大学生は多くの裁量が各自にゆだねられる分、2人のレベルからさらに上を目指そうと思ったら、これまで以上にストイックな姿勢が求められる側面があると思います。卓球以外の娯楽に触れる機会も今までより増えると思いますが、どのように考えていますか?
戸上 (大学生活には)いろんな誘惑があるわけで、自分の中にプロフェッショナルという覚悟を持って生活していないと、周りの誘いなどを断りきれなくなってしまうので、そういうところを踏まえて卓球に集中していきたいと思っています。
練習量は減りつつありますが、高校の時と比べたら質は高くなっていますし、自分で考える時間も増えたので、そういうところは高校と比べてもプラスかなと思います。
宇田 自粛期間中に何をするかを考えていたくらいで、本格的な練習はまだできていませんが、オンとオフをしっかり分けていきたいと思います。卓球もしっかりやりつつ、オフの時には自分自身をリフレッシュさせて、卓球に集中できる環境を作っていけたらと思っています。
最後の質問は新大学1年生には少し厳しい質問かもしれないと思いつつも、時代を担ってほしい2人だからこそ思い切って投げかけてみたが、2人は全く動じることなく「卓球に集中」という言葉を返してくれた。
次回は、試合がない中でどのようにモチベーションを維持しているのか、また、2人を悩ませているけがについての話を紹介する。
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(取材/まとめ=卓球レポート)