卓球レポートでは、卓球日本にとって悲願の金メダルを獲得し、一躍時の人となった水谷隼(木下グループ)にインタビューをする機会を得ることができた。ここでは、既に多くの場で語られている混合ダブルスではなく、苦心の末に水谷が自身の手で銅メダル獲得を決めた男子団体に焦点を当てて話を聞いた。水谷本人が「初めて話したことがほとんど」というエピソードの数々を味わっていただきたい。
今回は第1回に続き、男子団体準決勝のドイツ戦を振り返ってもらった。
ドイツ戦ではオーダーを当初の水谷/丹羽のダブルスに戻しましたね。
ドイツ戦は、僕がシングルスに2点出たら厳しいと事前に倉嶋監督に言っていました。ダブルスに張本を出して、そこで負けたら試合が終わりになってしまうので、あのオーダーになったんだと思います。
フランチスカ/ボルとのダブルスは0対2の劣勢からでしたが、競り合いになりました。
最初の1、2ゲーム目で、11-2、11-3で負けて、こっちとしては一生懸命やっているんですが、正直もうやることないくらいの感じでした。1本1本必死にどうやったら取れるかというのを考えて、3ゲーム目からは僕たちが覚醒したような形で、2ゲーム取り返すことができました。
5ゲーム目も本当にいいところまで行きましたが、相手のネットインがあってそこから引き離されてしまいました。
相手も左左の対策を立ててきていて、1、2ゲーム目、丹羽が全然チキータさせてもらえなくて、丹羽がレシーブの時に4点取られるということが続いて......。丹羽がレシーブの時にチキータをやめてから、ちょっとよくなりましたね。フォアでレシーブすれば、相手もロングサービスを出せなくなりますし、レシーブミスが減るので、凡ミスでスコアを離されることがなくなりましたが、勝ち切れませんでしたね。
2番で張本選手がオフチャロフ(ドイツ)に勝ちました。どうご覧になりましたか?
オフチャロフはすごいよかったと思いますが、張本が実力で上回っていましたね。最後は張本の圧というか、ガッツにやられて、オフチャロフがどんどんシュンとしてきたのを感じました。普通だったらオフチャロフもファイターなので、ガッツを出してくるんですが、最後は萎縮しているように見えました。
張本はオフチャロフに勝って、自信を取り戻して、プレーもよくなってきたと思いました。
そして、卓球ファンにとっては最高のカード、水谷対ボルですね。水谷選手が1ゲーム目を取って、ボルもあまり状態がよいようには見えませんでしたが、実際にはいかがでしたか?
やっていて常にプレッシャーを感じるというか、ボルは攻撃型ですが、回転量が多いタイプなので、やっていて相当きつかったですね。回転が見えにくいので、ボールが速くて回転量の変化が少ない相手の方がやりやすいんですけど、ボルは逆ですよね。
相手に回転をかけられてしまうと、ピンポイントで良い角度を出さないといけなくなるので、角度調整が難しい。厳しい試合でした。
試合の途中でめがねを外したのにはどのような理由があったのでしょうか?
試合の途中でめがねが曇ってきて、数本はそのままプレーしたんですが、何も見えないくらいまで曇ってきちゃって、さすがに外したくないけど、外さないとどうにもならないほどでした。
張本選手は4番でもフランチスカ選手に勝利して2点目を挙げました。
張本がフランチスカに勝ってくれたのはすごいよかったけど、実力的にはもっと簡単に勝ってほしい相手でしたね。
乗り切ってはくれたけど、まだ、実力の6、7割しか出ていないなと思って見ていました。
ラストの丹羽対オフチャロフは、世界卓球という大舞台で勝ったこともあるので、悪い組み合わせではなかったと思いますが、内容はどうでしたか?
丹羽とは10年くらい一緒に日本代表で団体戦を戦ってきているのでよく分かりますが、彼は団体戦は得意ではないですね。もし、今後も団体戦に出るとしたら、何か変化がほしいです。
彼自身も苦しんでいるとは思いますが、もう一泡吹かせてほしいという気持ちはあります。
決勝進出はなくなってしまいましたが、銅メダル決定戦は翌々日でしたね。どのように気持ちを切り替えましたか?
ドイツ戦はダブルスもチャンスがありましたし、自分のボル戦も惜しかったので、そこで勝ち切れなかったのはちょっと引きずりましたけど、銅メダルのチャンスがまだあるということで、気持ちを切り替えようと努力はしました。
ダブルスでの思いがけぬ善戦、ボルにも1ゲーム目を先行していながらの逆転負けと、悔しさの残る敗戦で決勝進出のチャンスを失った水谷。銅メダル決定戦の相手は難敵、韓国だ。
次回は銅メダル決定戦、日本対韓国を振り返る。
(取材=卓球レポート)