準決勝で王楚欽、決勝で馬龍と、中国のトップ選手を連破して、WTTチャンピオンズ フランクフルト(10月29日〜11月5日)においてセンセーショナルな優勝を飾った林昀儒(中華台北)。
近年、WTTコンテンダーでの優勝はあったものの(2023年WTTコンテンダー アルトマイ 男子シングルス優勝、2022年WTTコンテンダー ザグレブ 男子シングルス優勝)、久々にビッグタイトルを手にした林昀儒は今、何を思うのか。
来日した林昀儒にインタビューを行った。
戦術を立てても、試合中は臨機応変に
相手の変化に対応しなければならない
--優勝おめでとうございます。まず、WTTチャンピオンズはあなたにとってどのような位置づけの大会でしたか?
林昀儒 重要な大会だと思っています。
どの試合も相手は強かったので、自分がチャレンジャーの気持ちで試合に臨めたことが一番の勝因だったと思っています。
--準決勝では、最近特に分が悪かった王楚欽に4年ぶりに勝利を挙げることができました。勝因はどこにあったのでしょうか?
林昀儒 負け続けていたからこそ、プレッシャーなく立ち向かっていくことができました。また、戦術面でも想定通りに実行できたことが勝因になったと思います。
--今回の王楚欽戦では、普段はあまり使わない巻き込みサービスを積極的に使うなど、いつもとは違う戦術でプレーしているように見えました。
林昀儒 そうですね、そうしたサービスなどの工夫もある程度の効果があったと思います。いつものやり方ではおそらく勝てないと思ったので、変化を加えることを心掛けました。その成果が出たのだと思います。
--これまでの試合では、なぜ王楚欽に勝てなかったのだと思いますか?
林昀儒 王楚欽とは左利き同士で、得意のサービス・レシーブで優位に立てませんし、そもそも実力も相手の方が上だと思っています。自分の調子がよければ勝負できるのではないかというレベルです。
今回は、サービス・レシーブで優位に立つことができましたが、彼らトップ選手と対戦するときは、事前によい戦術を立てても、相手もいろいろと考えてプレーしてくるので、実際には試合中は臨機応変に対応しなければなりません。重要なのは、その時の相手の変化にいかに対応できるかだと思います。
--王楚欽戦は、レシーブで積極的にチキータをして、4球目でもライジングでバックハンドを振っていて、バック対バックでも勝っていましたね。
林昀儒 そうですね。バックハンドの調子がすごくよかったので、恐れずにバックハンドを振ることができて、王楚欽に対抗できたのだと思います。
王楚欽戦では、お互いに疲れていたと思いますが、彼の方が試合に集中するのが遅かったと思います。私は調子がよかったので、思い切ってプレーすることができました。
チキータだけではなく、
いろいろなレシーブに取り組んでいる
馬龍戦ではその成果が出たと思う
--決勝で対戦した馬龍には、9月に開催されたアジア選手権平昌大会で0対3で敗れています。好調の中でのストレート負けは意外でしたが、今回の決勝にはどのように臨みましたか?
林昀儒 アジア選手権大会は5ゲームズマッチでしたから、強い相手と対戦するときは、自分のペースをつかむのが遅くなると5ゲームだと非常に苦しいですね。
ただ、馬龍は互いのプレーをよく知っているので、しっかり準備すればやりにくさはありません。今回もいい勝負にはなると思っていました。
--今回は、馬龍のサービスに対してストップやツッツキも効果的に使っていましたね。
最近はチキータだけでなく、ストップやツッツキも使えるように強化していて、試合中も積極的に試すように意識しています。馬龍戦では、その成果が出たと思います。他にも、フォアハンドのツッツキなど、いろいろなレシーブに取り組んでいますが、まだ練習中です。
--優勝を決めた瞬間の気持ちはどのようなものでしたか?
林昀儒 うれしかったけど、まさか優勝できると思っていなかったので、ちょっと不思議な感じでした。ランクの高い大会ですし、自信にもなりました。
今の方向性は間違っていないと思う
サービス・レシーブをさらに伸ばしていきたい
--今後の目標をお聞かせください。
林昀儒 具体的には考えていませんが、世界ランキングをもっと上げる努力をしたいですね。
--来年に迫ったパリオリンピックでの目標もお聞かせください。
林昀儒 強い選手ばかりなので、一戦一戦頑張って一つでも上に行けるように頑張ります。
今の自分の卓球の方向性で間違っていないと思うので、今後は自分の特徴であるサービス・レシーブをさらに伸ばしていきたいです。
林昀儒のプレーを見たことがない人は、彼のインタビューでの静かでソフトな受け答えから、フォア前をバックハンドで回り込み、前陣で目の覚めるようなカウンターを連発する大胆不敵な彼のプレーを想像することは難しいだろう。
この、コートの内と外での大きなギャップはどこから生じるのだろうか。
今回の短いインタビューではまだその核心に迫ることはできなかったが、これからもコート外での物静かな様子からはかけ離れた勇敢なプレーで私たちを魅了し続けてほしい。
(まとめ=佐藤孝弘、取材協力=馬佳)