世界卓球2021ヒューストン男子シングルスでベスト8に入り、先に行われたパリオリンピック男子シングルスではベスト16に入ったカナック・ジャア(アメリカ)。一見すると、台からあまり下がらず前でプレーするオーソドックスなシェーク攻撃型だが、その内側には勝つためのさまざまなインテリジェンスが詰め込まれている。
この特別企画では、ジャアのストロングポイント(強み)について、本人とジャアのコーチであるヨルグ・ビツィゲイオ氏(ドイツ)のコメントを交えながら明らかにしていく。
第3回は、ジャアの特徴的な技術であるハイトスサービスについて解説してくれた。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています
サービスの組み立ての柱はハイトスサービス
ジャア 自分のサービスは、ハイトスサービス(投げ上げサービス)を多く使うのが特徴です。ハイトスサービスは、ジュニア時代にコーチだったステファン・フェス(元アメリカ代表監督)に教えてもらったり、ステファンの義理の父が元中国代表の李振恃(1977、1981年世界卓球男子ダブルス優勝)で、李振恃から直接指導を受けたり、彼のまねをしたりして覚えました。
サービスは、ラリーを支配するための最初の球なので、サービスを出した後の展開もしっかり考えて出していますし、サービスからの展開も含めて、サービスについては自信を持っています。
でも、コーチにはまだまだだと指摘されているので(笑)、もっと得点できるようサービスを磨いていきたいと思います。
ビツィゲイオ コーチの私から見れば、ジャアのサービスにはまだまだ改善の余地があります。1球1球のサービスの質はそれほど高くありません。いろいろな回転やコースを組み合わせることができるので、そうしたサービスの使い方、生かし方のクオリティは高いと思います。
ジャアのハイトスサービスは使う選手が少ない分、常に相手を不安にさせます。そして、彼の大きな強みは、「これは強い回転がかかっているぞ」」このサービスをレシーブするのはかなり難しい」と相手に思わせないことです。
先ほども述べたように、ジャアのハイトスサービスは、個々のサービスを見ると強烈な威力があるわけではありません。しかし、トスの高さやコースなどのバリエーションが豊富で、そのバリエーションの中から、どのサービスをどこに出せばどんなレシーブが期待できるのか、どう攻撃につなげていくのかをジャアは熟知しています。そのため、相手は知らず知らずのうちにジャアのハイトスサービスにはまっていきます。これこそが、彼のサービスの決定的な強みです。
ハイトス下回転ショートサービス|ハイトス上回転ロングサービス
ハイトスサービスを出すポイント
ジャア ハイトスサービスは、ボールを高く投げ上げた後、落下してくるボールのスピードが速いので、打ち損じたりコントロールをミスしたりするリスクがあります。そのため、そうしたミスが出ないよう練習を繰り返し、サービスをしっかりコントロールする方法を身に付けなければなりません。
私がハイトスサービスを出すときは、「頭でイメージするよりも少し低いところで打球する」ことを心掛けています。
ハイトスサービスに限らず、サービスをもっと良くしようと思うのなら、「どのようなラケット角度で打球するか」「どこに第1バウンドさせるか」「ボールのどこを捉えるか」の3つを意識して練習に励むことが大切です。
ハイトス下回転ショートサービスのスイング
ハイトス上回転ロングサービスのスイング
1970年代後半から1980年代前半にかけてサービスの名手として世界から恐れられた往年の名選手・李振恃の影響を受けたというジャアのハイトスサービスは、相手がレシーブミスを繰り返してしまうような強烈な変化はないが、コントロールが抜群でバリエーションも多い。このハイトスサービスを起点に、得意の速攻へつなげるのがジャアのストロングポイントだ。
ボールを高く投げ上げるハイトスサービスは、コントロールを安定させることが難しいが、その半面、相手のレシーブを乱す効果も大きい。
サービスの幅をもっと広げたいと考えている選手は、ジャアのコメントや連続写真を参考にして、ぜひハイトスサービスにトライしてみよう。
最終回は、ジャアのストロングポイントとして、レシーブにスポットを当てる。
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(取材/まとめ=卓球レポート)