強さを測る指標として、「タッチ」はよく使われるフレーズです。「あの選手はタッチがいい」とか「タッチが柔らかい」などなど。とはいえ、実際のところ、タッチとは何なのでしょう。目に見えるものではないので、タッチと言われても今ひとつピンとこない方は多いのではないでしょうか。
そこで、この企画では、トップ選手たちがさまざまなケースにおけるボールタッチについて、自分の言葉で表現してくれます。彼らが語る直感的な言葉の数々から、これまであまり踏み込まれてこなかった「タッチ」の実像に触れてください。
今回は、吉村真晴選手が、ループドライブに対して中陣からバックハンドでカウンタードライブするときのタッチを言葉にしてくれました。
ピッツァの「ツァ」のイメージでボールを捉える
ループドライブ(回転量の多いドライブ)がバック側に来た場合、台に近いところにいるときは、この企画の初回でお話ししたようなタッチでバックハンドブロックや攻撃的なブロックをします。しかし、こちらがツッツキを送って相手の攻撃に備えて台から下がったときなど、台から離れているときにバック側にループドライブを送られるケースもあります。
今回は、そういう場合にバックハンドでカウンタードライブするときのタッチをお話ししましょう。
ループドライブを台から離れた中陣からバックハンドカウンターするのは、とても難しい技術です。高難度のこの技を成功させるためには、まさにタッチが決め手になります。
前回紹介しましたが、ループドライブをフォアハンドでカウンタードライブするときは、ボールをラケットにガツンと強く当てるように打ちます。しかし、バックハンドはフォアハンドほど体を大きく使えないので、このケースでボールとラケットをガツンとまともに当ててしまうと、ループドライブの回転の影響をまともに食らって打球がオーバーミスしてしまいます。
そこで、僕がこの技術を行うときは、ガツンと強く当てるのではなく、薄くボールを捉えるようにしています。
そのときのタッチは、「ツァ」です。発音はイタリア料理のピッツァ(pizza)の「ツァ」をイメージしていただけたらいいと思います。
「ツァ」をもう少し具体的に説明すると、「ボールをラバーの上で少しスリップさせる(滑らせる)イメージ」ですね。「ツァ」のタッチでボールを薄く捉えると、ループドライブがラバーの上でスリップするので、ループドライブの回転量を抑えることができ、打球が相手コートに収まってくれます。
打球するときは「ラバー100(ハンドレッド)」
「ツァ」のタッチを出すためには、「ラバーだけでボールを捉える」イメージで打つことが大切です。そうすると、ボールを薄く捉えられるので、「ツァ」のタッチで打球しやすくなります。このとき、板(ラケット)にまで力が伝わってしまうと、「ツァ」のタッチが出せないのでループドライブの回転の影響を受けやすくなり、打球が安定しません。
ラバーだけで100パーセントボールを捉える「ラバー100(ハンドレッド)」を心掛けることが、「ツァ」のタッチを出すためには必要不可欠です。
「ボールのどこを捉えるか」が重要
「ボールのどこを捉えるか」も、ループドライブを中陣から「ツァ」のタッチでバックハンドカウンターするための大切なポイントです。
具体的には、ボールを時計に見立てて、文字板の数字の11と12の間、つまり、ボールの真上よりほんの少し手前を狙うのがセオリーです。ただし、僕のイメージでは、もっとピンポイントで、ボールの真上にかなり近い11時56分から58分のあたりです。細かすぎですか? まあ、イメージということで(笑)。
「ボールのどこを捉えるか」を意識し、ボールをラケットに当てずにラバーだけで「ツァ」のタッチで打球することが、この技術を成功させるためのポイントです。
ループドライブに対する中陣からのバックハンドカウンタードライブ
まとめ=卓球レポート編集部